コラム-バンコクの春-

バンコクの春

理事長 
市川隆治

 

 3月初めにタイのバンコクを訪問する機会を得たので、現地の日系VCのキャピタリストに会ってみた。当時東京は10度前後の寒さであったが、飛行機で7時間南に飛ぶといきなり35度となり、春というより真夏の気候であった。帰国後すぐ、バンコクの水上バスで不適切な燃料の取扱いによる爆発騒ぎがあり負傷者も出たとの報道に接し、チャオプラヤ川の水上バスで向こう岸に片道3バーツで渡っていた身としては背筋が寒くなった。

 

 さて、バンコクにおいてもここ3~4年でようやくベンチャーの動きが出てきて、VCというビジネスも認知され始めたが、まだまだ一般に理解されるというところまでは行っていないようである。2012年と2015年で比較すると、出資を受けたベンチャーは3社から59社に増え、VCファンド数は3本から13本に、ファンドレイズ額は700万ドルから7900万ドルと十倍になったとの数字がある。出資先の業種については電子商取引が中心で、米日のビジネスモデルの模倣という感じのものが多いとのことであった。

 

 さらに、アジアで活躍する別のVCの話を聞くと、大雑把に言って模倣とオリジナルは8対2と言っていた。オリジナルの中には、ASEAN某国において、薬局が医者の処方箋通りの薬を出してくれているかどうかをチェックするITシステムということであった。なるほど日本では考えらないシチュエーションがあれば、独自のビジネスが成立するのであろう。

 

 バンコクをはじめとした東南アジアではようやくベンチャーに目が向けられ、これから春を迎えようとしている。日系のVCや、米国のVCでも500スタートアップスのように既に現地に拠点を構えるところが出てきている。我が国としても東南アジアの元気を日本経済の成長に取り込むべしとは以前から言われてきているところであるが、ベンチャーの世界においても同じになってきているのではないだろうか。