VECベンチャーニュース(平成27年第8号)-台湾との連携―
Thursday August 6th, 2015
VECベンチャーニュース(平成27年第8号)-台湾との連携―
理事長 市川隆治
かつて台湾に駐在していた頃、「日本人は匠であり、台湾人は商人だ」と指摘したところ、地元の経済誌に写真入りで紹介されたことがあった。どちらが偉いということではなく、日本人技術者は技術にこだわり、目指す技術レベルに達しない限り研究開発を継続しようとするのに対し、台湾人経営者は適当なところで製品を販売し、利益を挙げて次のビジネスに取り組むという辺りのことを表現したものである。
ベンチャーの世界でいえば、日本人起業家の技術やアイデアと、台湾企業の事業化への執念、安価な製造、そして巨大な大陸市場への橋渡しがうまく結合すれば、メガベンチャーが誕生するのではないかということになる。日本の起業家がいまいち大きな成長機会を逃しているのも事業化に対する情熱が欠けていることにひとつの原因があるのではないかと最近考えているところである。
もちろんこれまでも台湾政府や台湾企業はこうした日台のコラボレーションをことあるごとに喧伝してきたわけであるが、そうは言ってもなかなか最初のとっかかりが難しかったのではないだろうか。そこで今年3月30日に台湾の工業技術研究院 (ITRI)がTRIPLE事業 (Taiwan Rapid Innovation Prototyping League for Entrepreneurs) を立ち上げた。今年5月末現在260社の台湾企業がこのLeagueに参加しており、起業家が連携の申し込みをすると10日以内に最適な台湾企業を紹介してくれるということである。260社の内訳としては、プロトタイプ製造が49%、価値あるデザイン提供が19%、価値ある調査が19%、価値あるブランド・マーケッティングが4%、その他が9%ということである。地元台北の他、米国シリコンバレー、ドイツ・ベルリンと合わせて、東京にもITRI Japan Officeがあり、日本人スタッフも常駐しているので、相談しやすい環境となっている。
世界をリードする日本のマイクロモーターメーカーも川崎とシンガポールと合わせて台湾に研究所を立ち上げ、3極体制とすると聞いており、また、日本の電気自動車メーカーも台湾の製造技術に目をつけていると聞いている。台湾の高度な技術力を証明するものとしては、航空機部品産業がある。同分野は非常に精密な加工技術を要求され、ボーイングやエアバスの厳しい品質検査をパスし、Certification をもらわないと製品を納めることはできないが、先日訪問した高尾郊外の2社においては10枚ほどのCertification を壁に飾っていた。うち1社では日本製の精密工作機械を200台以上並べ、航空機のエンジンカバーや脚を製造していた。
日本の起業家も台湾の潜在力を活用して世界市場にチャレンジしてみてはどうだろうか。