第170回「3Dプリンターの底力㊤ – ベンチャーこそ『メイカーズ』になれ」

 ここにきて3D(次元)プリンターが熱くなってきた。当初の玩具のようだった光造形プリンターから、いよいよ本格的な航空・自動車部品まで作れる時代がやってきたからである。3Dプリンターについては当VECも早くから理事長を始めとして強い関心を寄せており、新しいベンチャーへの道を拓く中核として注目していた。

 

 それは単に3Dプリンターの開発という狭い世界だけではなく、それが秘める極めて幅広い分野への応用・開発・コンサルティング、3Dプリンターの造形のベースとなるCAD・CAMをベースとした設計データからのデータの開発・取得・表示・設計データそれ自体がもつ汎用的な面の可用性とそのデータベース化・販売の設計データ自体の汎用化・商品化という仕事もある。

 

 また高価な3Dプリンターなどは購入できないが、ぜひ試作品を作りたいといったベンチャー、製品企画担当などに応じて各種の3Dプリンターを取り揃えて試用に提供する一種のラボ『メイカーズ』も新たなベンチャーの進む道として浮上している。顧客に対するコンサルティング、試作指導、販売などで米国のメイカーズはさばききれない程の在庫を抱えているという。

 

 造形データ作成まで含めると、3Dデータが創出する市場は測り知れないほど広いのである。かつて液体状の光硬化性樹脂にレーザーなどを当てて必要な部分を硬化させ有体物を作るという作業は一部マニアの間で行われていた。このレーザーを当てる部分にCAD・CAMデータを持ち込んだのが最初に現れた「光造形3Dプリンター」である。この製品については筆者も一家言があり、次の稿で言及することになるだろう。

 

 これを見て現れたのが「粉末焼結3Dプリンター」だ。出力された設計図の線上に熱硬化樹脂の粉末を置きレーザーを当てて硬化、上方へとこれを繰り返して目的とする形状を得ようというもので、これが現れてから粉末に金属粉末を混ぜて成形物を強化する方式も考え出された。

 

 さらに知智者がいるもので、チューブの先端からクリームを出すように線に沿って溶けた樹脂を置いていって硬化を繰り返して積層するという「熱融解積層3Dプリンター」を編み出した。

 

 一方では、「インクジェット方式」を応用して硬化樹脂を必要なところに配置する方式から、石膏粉に接着剤を噴射する「石膏積層3Dプリンター」まである。石膏では様々な彩色、そして評価できるという大きな特徴があり、モデルとしてデザイン関連で重用されている。

 

(多摩大学名誉教授 那野比古)