第124回「無から有を生み出すBizモデル②‐今後発展が期待されるESCO」
Thursday November 1st, 2012
無から有を生み出す典型的なビジネスとして、今回はESCO(エスコ)事業を考えたい。ESCOはエネルギー・サービス・カンパニーの略で、エネルギー・コストの削減やCO2排出量の削減が本事業の目玉であり、ESCOに仕事を依頼した側も、さらにESCO自体もそれなりに儲かるというWIN-WINの関係が仕組まれる。
この動きは省エネやCO2削減で規制を強化しようとしている政府の動きと一致している。ただ省エネなどを実施するにはそれ相当のコストがかかる。そうでなくとも経済環境が悪い中で実施主体が足踏みするのはこのためだ。しかし規制の影は背後から迫っている。板挟みとなっていると言っていい。この板挟みをビジネスに変えようというのがESCOで、ある意味ではソーシャルビジネスの一種といっていい。
ESCOは省エネ・システム、装置を販売・メンテする。ESCOの最大の特徴は、顧客側に対して、省エネ高価を光熱費削減というコスト金額でわかる保証を行う点にある。
顧客側は、このコスト削減が保障されるが故に安心して省エネに向けた初期投資に出資することができる。つまりESCOとは、省エネで浮いたコスト分で、省エネ・システム装置の導入費、メンテナンス費等を賄おうというもので、結果的にはタダで省エネを達成できる。ESCO事業側のメリットとは何か、それは保証した光熱費コストの削減以上に大きな節約ができた場合には、当初約束した割合分をESCO業者が受け取る権利を有する。これがESCO業者の利益の源泉のひとつ(他に装置・システムの導入の際の斡旋料がある)であり、これが継続的に実現することによってESCO業者の存続が保障される。
一方、保証したコスト削減を達成出来ない場合は悲劇だ。ESCOはそれを補償する責任を負う。となると、ESCOが提出するコスト削減の見積もりは極めて重大な意味を持つこととなる。
従ってESCOは、一部の省エネといった部分的な注文ではなく、顧客側の省エネ・プロジェクト全体を一括して請け負わなければならない。この際、ESCO側は導入初期費用のすべてを調査・提供する「シェアード・セイビングス」という契約の形では、コスト削減見積もりのミスは致命傷となる。導入初期費用を顧客側が持つ一般的な場合の契約は「ギャランティード・セイビング」と呼ばれる。
いずれの場合もリース業者を介在させることが可能だが、導入した設備の所有権が異なる点に注意が必要で、シェアード・シェイビングスでは、それはESCO、リースが介在するとリース会社となる。むろんこの所有権は契約の終了まで存続する。ただこのように条件の厳しいビジネスだけで、少額では採算が合わず、少なくとも5000万円以上の案件とされている。
ESCOは米国で開発された方式で、米国の市場規模は現在6000億円程度とされているが、わが国ではまだ馴染みがなくその8%に満たないとされている。
ESCOは今後大きな発展が予測され、ベンチャーの活躍が期待される分野だけに、計画のコスト上の精密化技術の開発が待たれるところである。
(多摩大学名誉教授 那野比古)