第79回「(特報)経産省の起業家人材育成事業がスタート‐コンテストには6校の大学チームが参加」
Thursday December 15th, 2011
去る12月10日、TKP赤坂ツインタワーカンファレンスセンターで、経済産業省の起業家人材育成事業に基づく平成23年度「全国フォーラム」が開催された。主催者は同省、大学・大学院起業家教育推進ネットワーク(事務局:ベンチャーエンタープライズセンター・略称VEC)および日本ベンチャー学会。
大学・大学院レベルでのアントレプレナーシップの育成が狙いで、経産省の主催でビジネスプランコンテストを開催するのは今回が初めて。
トライアル試行された今回のビジネスプランコンテスト全国大会(審査員長:安達俊久・日本ベンチャーキャピタル協会会長)には、青山学院大学、国際教養大学、東京大学、広島修道大学、立命館大学、早稲田大学の6校の大学チームが参加した。
まず目にとまったのは、東大チーム「キューブレイン」が応募した「クラウドを用いたX線CT画像提供サービス」(最優秀賞)。CT画像では極めて細かな濃淡の差が診断を下すには極めて重要で、このサービスでは、中精度のCT画像も、クラウドを介し、キューブレインが開発した独自の画像再構成によって高精度の画像に変換できるというもので、中精度のCTマシンしかないとか、線量低減のため、あえて中精度の画像にしたなどといったケースに対応できる。
一般の診断では、90%が中精度のCT画像で十分というが、残る10%には高精度画像が必要だという。しかし、高精度画像を得るためには、対応したCT装置や、特別なソフトウェアが必要となり、病院にとってコスト・パフォーマンスが問題となる。この点クラウド・コンピューティングが利用できればそのような懸念もなく、わずかなサービス料で必要な高画質CT画像を手にすることができる。このような実用性の高さが評価された。同チームは特許も出願しているという。
早稲田大学チーム「オリィ研究所」のテーマは、会いたいという想いを叶える福祉用コミュニケーションデバイス開発と提供。要するに、自分の身代りになる癒し系ロボット・「オクホーム」の開発である。
これは高齢者や要介護者、患者などが、自分の行きたい所にこのロボットを置いてもらい、施設、病院、自宅からインターネットを用いてリモート・コントロール。自分の分身のように周りの人々との自然なコミュニケーションを可能にするというもの。持ち運びも可能で、家族や友人と共に旅行もできる。
癒し系ロボットとしては、産総研の「パロ」、NECの「パペロ」などが有名だが、これらのロボットとは別の切り口から新しく安価な癒し系ロボットの提供と捉えている。
その他応募について一覧すると、国際教養大学チーム「スペック」の「キャリアサポート型ソーシャルネットワークサービスの運営」、広島修道大学チーム「セプテム・テリア」の「会員制移動ペットショップ・サム」、立命館大学チーム「ディコット」の「エネルギーハーベスティング~ONボタンを手に入れよう」、青山学院大学チーム「チーム・マイ・ブック・ラウンジ」の「マイ・ブック・ラウンジ‐本に出会う、本を薦めるを楽しく」など。
またコンテストの後には、「起業家教育の要件とは」「起業家教育の現状」、「起業家教育に有効なツールとは」などをテーマにパネルディスカッションが開催された。モデレーターは各務茂夫・東大教授。
参加者は大学関係者、学生を中心に約120人であった。
事務局のVECでは、今回は初のトライアルとはいえ大成功としており、「来年は各地方の経産局ベースの予選を経ての全国大会に発展させたい」(市川隆治・VEC理事長)という。
(多摩大学名誉教授 那野比古)