第5回「“超小売り”ともいうべき新たなベンチャー」
Tuesday June 30th, 2009
食品関連小売店相手の“超小売り”ともいうべき新たなビジネス・モデルで成功を収めた企業がある。大分県津久見市にある株式会社タイセイだ。
田舎町の小さなお菓子屋さんやお弁当屋さん。これらのお店でも品物を入れる容器や包装紙、箸などが必要だが、これらを購入しようとすると少なくともロットで数千個以上まとめてくれという話になる。しかし、実際毎日必要なのはわずか20個とか数十枚。とてもロット買いして置いておくほどのものではない。
そこでタイセイに電話、FAX、インターネット経由で注文を出す。少量でよいのだ。タイセイの巨大な倉庫から目的の品物が数量だけキッピングされ、全国どこにでも即時配送される。
筆者は、数年前、Qボード上場前のタイセイを地元新聞の記者とともに訪ねたことがある。巨大な倉庫には様々な食品関連商店向け資材数千アイテムが大量にロット買いされアイテム別に整然と並べられており、コンピュータ出力用紙に従って注文に応じて必要量をテキパキとロットから切り出しているのは、地元のアルバイト女性陣だ。
倉庫の西側には、東洋一の石灰石採掘場がそびえ立つ津久見市。かつては、この採掘場でも多くの雇用を生み出していたが、合理化の進んだ石灰山は、今では優秀の働き手を提供する人手源となっている。
大ロットを小分けして少量小口の注文に応じる。大ロット買いがベースだから小口での注文も低コストですむ。商店側としては必要な時に必要なだけ入手することが可能となり、家の片隅に積んでおいて容器や包装紙が不衛生にもほこりまみれになったり、色あせるといったことは絶対になくなる。新鮮さが必要なのはその中味ばかりではない。容器などの新鮮さを商品化しているのがタイセイということもできる。
(多摩大学名誉教授 那野比古)