コラム-DECA/ICDC 2019 in Orlando-

DECA/ICDC 2019 in Orlando

 

理事長

市川隆治

 

 ビジネス界における次世代リーダーを育成する高校生のためのプログラム、DECAの世界大会に位置づけられるICDC (International Career Development Conference) 2019 が4月27日~30日に米国フロリダ州のオーランドにおいて開催された。昨年2018年はジョージア州アトランタにおいて開催され、その模様は既に報告(コラム DECA ICDC)したところであるが、今年もその熱気は変わらなかった。昨年は日本人としては私ひとりの参加で、2万人の高校生が集まるICDCとはいかなる行事なのかを自ら体験し、日本の皆さんにそれをお伝えすることを目的としていたが、今年はその甲斐あって広尾学園高等学校から14名の精鋭の高校生が Written Event に挑戦した。Written Event とは、あらかじめ作成したビジネスプランの書類を提出するとともに、審査員の面前で英語でプレゼンテーションを行い、その点数で優劣を競う科目である。全体で53の科目がある中で、大半はマークシート方式のテストと Role Play と呼ばれる特定の場面設定を受けての審査員に対するプレゼンテーションで構成されるのであるが、米国での普段の教育を受けていない日本人高校生には難しいとのアドバイスもあり、事前に準備のできるWritten Event に挑戦してもらうこととした。とは言うものの、参加募集が2月で、実際の事前研修は2月から4月にかけての約2か月間というドタバタ劇で、何とか形を整えたというのが実情であった。募集に際しては定員が埋まるかどうかすら心配していたが、さすが起業力教育に熱心な広尾学園だけあって、定員を大きく上回る応募があり、校内のエッセイテストでふるい分けたくらいであった。

 DECAのルール上、生徒8人に一人の先生が同行することが求められ、今回は広尾学園の先生お二人(木村先生と山本先生)に日本国内の認定校サポート機関、DECA Japanの(一社)カピオンエデュケーションズ能登理事に、そのスポンサーの私、さらに旅行会社からおひとりの総勢19名で渡米した。約1週間の滞在であったが、途中初めての英語でのプレゼンテーションに対するプレッシャーか、体調を崩す生徒もおり、二手に分かれざるを得ないこともあり、大人が5人で手分けして何とか乗り切ることができた。

 

 大会前日はまずDECA公式制服のブレザーの購入から始まった。審査員の前ではドレスコードが決まっており、DECAブレザーに男子はネクタイ、女子はスカーフとなっており、制服の上着をDECAブレザーに替えることで対応した。

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 イベントと試験の空いた時間は会場の廊下でプレゼンテーションの練習に励む。

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 そうしているとDECA Spainの生徒たち(スペインチーム)が陣中見舞いにやってきた。

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 夜にはGTEで協力関係にあるカリフォルニアのHarker High Schoolの生徒たちと会場近くのイタリアンレストランで交流夕食会を企画してDECAへの意気込みを語り合った。

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 恒例により初日のプログラムは5キロのマラソン、5K Run/Walkである。行事名のとおり、歩いても許される。去年見かけた足に障がいのある女子生徒も歩行器を使って完走していた。実際歩いてみると去年のコースより幾分短く感じた。

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 夜の開会式は試験会場でもあるOrange County Convention Centerの大ホールで開かれた。去年はスタジアムで席に高低差があり、上から眺めることができたが、今年の会場はフラットで、少々眺めがよくなかった。事務局に確かめると、スタジアムを使うのはアトランタと、再来年のアナハイムということであった。ここで初めて生徒代表が旗手を務めて日の丸が会場に翻った。

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 2日目は科目ごとにブリーフィング(試験を実施する前に行う事前個別説明会)。生徒たちは話が聞き取れるかどうか相当不安があったようであるが、英検2級より易しい感じでしゃべってくれて助かったとのこと。

 

 3日目がいよいよPreliminary Competition(ファイナリストを決める予選試験)。生徒たちの緊張もピークに達した。

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 一番心配されたのがQ&Aであるが、生徒たちの話では、コストのこととか、他の競合商品との違いとか、技術的な可能性とか、想定された内容だったので、自信を持って回答できたとのことであった。

 

 最終日の午前中にはAchievement Awards Session(中間結果発表会)があり、各科目でファイナリストのトップ20の生徒の名前が次々にコールされ、ステージ上でリボンを贈られ、彼らがFinal Competition(最終審査試験)に挑戦する。

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 Final Competitionで勝ち抜いた生徒には夜のGrand Awards Session(最終審査結果発表会)で1位から3位まで ”DECA Glass” と呼ばれる盾が授与される。夜の州集会に出てみると、さすがスタートアップの盛んなカリフォルニア州の生徒たちはたくさんの ”DECA Glass” を手に入れていた。

 

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 午前中のSessionで自分の名前がコールされないか耳をすませて聞いていた広尾学園の生徒たちは誰も呼ばれなくて意気消沈してホテルに帰った。能登さんと私は会場に残り、提出した書類の返却場に向かった。そこで奇跡が起きた!トップ20に準ずる入賞に広尾学園から参加した6チームのうち半数の3チームが該当し、彼らに賞状が用意されていたのだ。ホテルに帰り、先生に報告するとともに、賞状をひとりひとりに手渡しすると歓喜の声が挙がり、抱き合って喜びを表現していた。これで短期間ではあったが悩みながらビジネスプランを練り上げ、英語のプレゼンテーションを一生懸命練習してきた生徒たちの苦労が報われた。また、指導してきた我々としても指導方針が間違っていなかったことが証明され、来年以降の展望が開けた。

 なお、事務局にカナダのオンタリオ州以外では外国人生徒の名前のコールが全然聞かれなかったがと確認したところ、今年は確かになかったが、過去スペインとか中国とか韓国の生徒がコールされたこともあったとのことであった。ここにも今後の可能性を見出した。オンタリオ州は外国といっても別格で、アメリカのひとつの州の扱いで、また、800人からの大部隊でICDCにやってきており、多くの生徒が「○○○○(生徒の名前)オンタリオ~(出身州/国)」とコールされて目立っていた。

 

 いつしか「○○○○ジャパン」とのコールを聞いてみたいと切に願っている。