コラム-DECA ICDC-
2018年05月02日
DECA ICDC
理事長
市川隆治
2万人の高校生が街を埋め尽くす――これが今年4月21~24日に米国南部アトランタにおいて開催されたDECA ICDCの印象である。DECAについては既に「ベンチャー白書2017」のコラム(I-109ページ~I-110ページ)で書いたが、ビジネス界における次世代リーダーを育成する高校生のためのプログラムである。既にシリコンバレー地区大会には2017年と今年(2018年)1月、2度参加して刺激を受けて帰国したところであるが、今年はさらに最大の大会、4月のICDC (International Career Development Conference) にも参加する機会を得た。シリコンバレー地区大会への参加者が700人超であるのに対し、ICDCへの参加者数は2万人という。
意外にも初日のプログラムは5キロのマラソンから始まった。勉強ばかりではなく身体も鍛えよという、ICDC伝統の行事だそうである。ただ、プログラム名が ”DECA 5K RUN / WALK” とあるように、歩くことも許されており、先頭集団以外は友達としゃべりながら歩いていた。マラソン大会さながら、道路の1車線をコーンでしきり、中間地点には給水所もあった。ゴールを通過するとメダルがもらえた。私のすぐ後に、足に障がいのある女子生徒が歩行器の助けを借りながら完走し、ゴールすると盛大な拍手がわいていた。
メインストリートにはこのような旗がはためいていた。 |
初日の夜は開会式である。会場は、7万人収容可能なフットボールやサッカーの競技場であるメルセデス・ベンツ・スタジアム。その巨大さは東京ドームを凌ぐ。その3分の1ほどのスペースを使い、普段はピッチとなっている地面に巨大な舞台をしつらえ、同じく地面に置かれたパイプ椅子と斜面になった観客席を2万人で埋め尽くした。
観客席は超満員 |
参加国は写真の国旗の順番で、米国、スペイン、メキシコ、韓国、日本、インド、ホンジュラス、ドイツ、中国、カナダ(写真では隠れている)の10か国。日本については手続き途上で、生徒も送り込めていないが、私が参加したということで日の丸が振られたようである。各州の紹介では州の旗が振られ、自分達の州が紹介されるとその場所から大歓声が挙がる。日本で言えば選抜高校野球のノリだ。
参加国国旗が勢ぞろい |
2日目の午前中(科目によっては午後)はマークシートのテストとなる。四択の問題が100問で、制限時間は90分。科目は、会計学、ビジネス金融、ホテル経営、マーケティング、スポーツ及びエンタテイメントのマーケティング、観光等33もあり、生徒が選択する。会場は東京ビッグサイトのような巨大なホール、Georgia World Congress Centerだ。
真剣な表情でテストに取り組む |
このようなテスト方式のものの他にStart-up Business PlanやSchool-based Enterprise Food Operationsのようなプレゼンテーションをする科目もある。
テストが終わると隣が展示ホールとなっており、いろいろな大学のブースで情報収集したり、エンタテイメントのブースで遊ぶこともできる。また、SHOP DECAでDECAのグッズや問題集を買ったりもできる。
大人気のSHOP DECA。レジは長蛇の列 |
3日目はPreliminary Competitionで、多くの科目ではRole Playと呼ばれる、口頭試問となる。試験用紙に自分が、例えばホテルのコンサルタントであることが書かれており、不祥事を起こしたホテルの従業員に対し、どのように対処したらいいかを指導しなさいという問題。会計学であれば、自分は公認会計士で、売掛金や買掛金について会社の経理に説明するというような場面設定となる。審査員はボランタリーの生徒の父母が多いようである。審査員の用紙にはするべき質問が2問記されており、どの生徒にも同じ質問をし、生徒の回答ぶりで点数をつける。このような方式なので素人の父母が審査員になれるよう工夫されている。
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科目によって生徒がひとりの場合もふたりの場合もあるし、数人でパネルを使ってプレゼンテーションをしているものもあった。
これはSchool-based Enterprise Retail Operationsのプレゼン風景 |
ここまでクリアすると生徒には次のような証明書が渡される。しかしこれはDECAメンバーであることの証明というくらいの意味しかないようだ。
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3日目の夜にはDECA Concertが用意されている。会場は再びメルセデス・ベンツ・スタジアム。主役は若者に絶大な人気を誇るシンガーソングライターのAndy Grammer。
生徒達の歓声は今でも耳に残る。展示ホールやこのようなエンタテイメントを織り交ぜているところが高校生をICDCに惹きつける一因ではないかと思う。
暗くなった時に生徒が振っているのはスマホ |
残念ながら4日目には参加できなかったが、メルセデス・ベンツ・スタジアムで、Preliminary Competitionのトップ20の生徒が発表され、彼らがFinal Competitionに参加できる。科目によるが、平均して1科目200人が参加しているので、トップ20は1割くらいにしぼりこまれるということだ。そして夜にはFinalを勝ち抜いた各科目の優勝者が発表される。その盛り上がりは想像に難くない。優勝すると大学入試において、pretty goodな評価が得られると生徒から聞いた。
我が国においては圧倒的に起業家の数が少ない。そこを変えるには高校までの教育を万事受け身のスタイルから課題探索・解決型、自ら学ぶActive learning型に変えていかなければならない。それにはDECAに日本として参加できるような体制を整え、米国をはじめ各国の高校生と切磋琢磨させることが必要不可欠であると改めて考えさせられながら14時間の帰国の途に着いた。