シリコンバレー通信 Vol. 8 「起業家の卵」養成学校:Draper University
2015年03月27日
シリコンバレー通信Vol. 8 「起業家の卵」養成学校:Draper University
2013年、サンマテオに起業家育成学校Draper Universityが出現した。シリコンバレーの著名なベンチャーキャピタルファームDraper Fisher Jurvertson (DFJ)の共同創業パートナーの一人であるTim Draper氏が設立した、青年向けの「起業家の卵」養成学校だ。
Draper氏は「起業家に必要なものは知識やスキルだけではない。『正しい態度』(right attitude)を持っているかどうかこそが重要なのだ」という信念を持ち、Draper Universityでは実務的な教育というよりは、「起業家としての態度」にフォーカスしたプログラムを提供している。
今回、Draper Universityを訪ね、シリコンバレーでも話題の「新型」起業家育成学校の実態に迫った。
サンマテオのダウンタウンに佇むDraper Universityのキャンパス。以前はホテルだった建物を改装し、学生向けに学生寮も提供している。
1年間に3つのセッション(Spring、Summer、Fall)を提供しており、各セッションは7週間前後の期間となっている。各セッションの受講生数は40人であり、約4割が米国外からの留学生であるという。平均年齢は24歳で、大学生が約6割、社会人が約4割であるとのこと。学生の中には、実際に起業に取り組んでいる人もいれば、「将来的に起業したいな」とぼやっと考えているステージの人もいる。
Draper Universityのウェブサイトでは、プログラムのカリキュラムのサンプルとして以下のトピックを挙げている。
• Vision & Future
• Money & Resources
• Speed & Strength
• Legal & Justice
• Evangelism
• Special Powers
• Creativity
• Survival
普通の起業講座であれば、ビジネスプランの作成方法や、事業戦略、会計など知識重視の教育が多いが、Draper Universityではまさに「態度」や「哲学」によりフォーカスを置いていることがわかる。
プログラムの内容はまさに非日常的経験の連続である。例えば、各チームに生きている鶏を丸ごと一羽渡して、「これでディナーを作りなさい」という実習課題があったりする。鶏を殺して料理した経験など皆無いから唖然とする 。今までにやったことがないことを目の前にした時に、どうやって解決していくか、どう取り組んでいくか、まさに起業家としてのマインドセットを叩き込むことが狙いとなっている。
Draper University内のラウンジ。ここで学生は食事をしたり、課題に取り組む。
レクチャーでは、シリコンバレーの著名起業家を招待して、起業についてのトークセッションを数多く行っている。例えば、テスラモーターズのCEOであるElon MuskやZapposのCEOであるTony Hsiehもゲストスピーカーとして登場したという。
Draper Universityの敷地内のプール。ここで学生たちはBBQをするなど、勉強以外の活動も盛んで、プログラムを通してすっかり仲良くなるという。
知識志向の起業家教育は、ある意味、本やネット上の情報でも代替できるものだ。しかし、起業家としての「態度」「マインドセット」はなかなか独学ですぐに身につけられるものでもない。まだ社会に羽ばたく直前の若者をターゲットにして、起業家としてのあり方にフォーカスを絞った教育を提供するDraper Universityは 起業家教育の新たな潮流を示しているとも言える。
次回のコラムでは、実際にDraper Universityのプログラムに参加した日本人受講生の方にインタビューを行い、その実体験について語ってもらったことを紹介する。
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本コラムシリーズでは、サンフランシスコのスタートアップにて事業開発に携わる筆者が、自分の意見を踏まえてシリコンバレーの起業環境・スタートアップ関連の生の情報をレポートする。
(吉川 絵美)