第152回「無から有を生み出すBizモデル㉗‐双方向が威力のツイッター、テレビを抜くリアルタイム実現のボストン事件」
2013年05月09日
去る2013年4月15日、米ボストンで発生した爆弾テロ事件は、ツイッターが事件解決に大きな役割を果たしたことで、電子版ビジネスウィーク誌が大々的に取り上げるなど世間の注目を浴びた。
地元のボストン市警が公式ツイッターを開設したのは2009年。米国の警察がツイッターに参加したのは2008年のカリフォルニア州マウンテンビュー市警などが初例というから、ボストンは早い。事件後ただちにボストン市警はツイッターを本格利用して市民に犯人像や事件についての情報を求める一方、不測の事態に備えて自宅から出ないよう要請した。市民からは続々と情報が寄せられ、これが犯人に勝利する原動力となった。この状況を報道したのが前記の電子版である。
ツイッターへはわが国内でも取り組みをみせており,すでに現在1000以上の官公庁がサイトを開設しているといわれ、そのうちの多くがチェックマークを取得している。この青色のマークは、なりすましを防止するためにツイッターの日本法人が発行しているもの。ツイッターの物凄さは、1回のつぶやきはわずか140字以内と制限があるものの、テレビにはない双方向性はまさに現代の会話場面と言ってよく、文字通り生の声がその場で活かされる根源が整いつつある。スマホからも参加できるからユーザーの層は極めて広い。テレビと同じで、つぶやき(ツイート)も古いものはどんどん過去へと捨てられ、リアルタイムこそが重視され、ディスプレイ上に表示される。ここでちょっと補足しておくと、フォロワーというのは、他のつぶやきをランタイム(ディスプレイ)上に自動的に表示されるもの。最初は推奨ユーザー20人がランダムに表示されるが、自分でフォーローする人を集めておくこともできる。
ツイッター用語の「ランタイム」には、常にフォロワーからのつぶやきが表示される。ツイッターが持つ「RT(リツイート)」という機能によってつぶやきがどんどん他へと引用・転記(RT)され、自動的に輪のように広まる仕組みとなっているのだ。
ツイッター上で同志を集めての会合も簡単にできる。♯(ハッシュタグ)なる便利な機能もあり、手軽な双方向、大量相手のリアルタイムでは、テレビにはない新規性がある。
今後は、製品・サービス企画に活用されるばかりでなく、政治の動きすら大きく変える可能性を秘めている。新しいタイプのベンチャー企業誕生のゆりかごとしても注目の的だ。
(多摩大学名誉教授 那野比古)