第135回「無から有を生み出すBizモデル⑫-韓国ではネット選挙自由化へ判決、我が国は?」
2013年01月17日
今回の選挙でニューフェースとして頭角を現したNIの会。その幹事長のM氏が選挙の翌日、衆院選で勝ったお礼とも読めるメッセージを自らのツイッターに載せた。文面は「結果が出ました。国民の皆様、お世話になりました。」同様な当選報告とお礼は、ツイッターばかりでなくフェイスブックにもはん濫していた。ところで公職選挙法では、選挙後に結果を有権者にあいさつと称して文章を提示するとそれは違反として禁止しており、インターネット上の書き込みも含まれると、見解を示している。そうなると上述の行為は違反文書図書にあたる可能性がある。
選挙期間中では議員らが有権者に配布できるのは数が制限されたハガキやビラに限られている。そこにブログやツイッター、ホームページ、メールマガジンなどに新たな書き込みを行うとそれは公選法違反になるという見方である。詳しくは第131回や次回を参照していただきたいが、問題は、印刷物のハガキ、ビラと、インターネット上の書き込みが同一なのかという基本的問題である。そもそもその明快な解答は、公選法上には何ら示されていないのである。
しかし、ネットワークを利用した広告は従来の印刷物を用いたものをこのところ大きく上回っており、2013年には、インターネット広告がついに新聞広告を抜き去り、テレビに次ぐ第2位の広告媒体の座を占めたとみられている。2013年の世界のネット広告費は前年比15%アップ増(約9.5兆円)で、同2%ダウンの新聞広告(9.2兆円)に著しい対照をみせている。特にネット広告はこのところ唯一、年10%以上の高成長を続けており、さらにネットワークは最近、これまで本稿でもしばしば取り上げた新たな募金システム「クラウド・ファウンディング」へも進出しようとしている。
このような市場の変化を見据えて例えば欧米の印刷媒体各社は配信をネットワークに乗り換えようとしている。考えてみると配信コストがかからないネットワークの方が、印刷・配布媒体よりははるかに安上がりに済むからである。しかも迅速。ネット独自の機能である動画をフル活用した動画ニュースに力を入れ始めた。しかも従来とは逆に、この動画配信をベースにした電子書籍やビラ、キャラクターを制作、配布するという新たな相乗効果を打ち出している。その新たな方向の例が「NYタイムズ・ドット・コム」や「ウォール・ストリート・ジャーナル電子版」だ。
このように従来の印刷物の概念がここへきて大幅に崩れ去ろうとしている。世をあげてネット時代に突入しようとしている時に、古い公選法を拡大解釈するのは時代遅れ。
2012年12月に日本と同じ状況下にあった韓国では裁判所からネット選挙の禁止は憲法違反との判決が出され、ネットを利用した選挙活動が実現された。明確な条文や判例がないわが国も、早急なネット時代への対応が必要である。
(多摩大学名誉教授 那野比古)