第48回「福島原発事故〈知らぬではすまない自衛のためのデータ集①〉、ベクレル→シーベルト」

●シーベルト値は積算していく点に注意

●線量換算係数(ベクレル→マイクロシーベルト)
 食べた(経口)、吸った(吸入)ことにより体内に入った放射性物質(核種)の一般人70歳に至るまで全身の内部被曝の影響を「生涯線量」という。生涯線量を知るための「線量換算係数」は放射性物質により、また年齢により異なる。あくまで目安、参考値だが、それぞれの核種1ベクレル(Bq)を経口、吸入した場合(カッコ内は5~10歳に適用)、それが何マイクロシーベルト(μSv)に相当するかを知ることができる。ICRP(国際放射線防護委員会)の数値を転用。簡易的にはセシウム137、ヨウ素131については経口1ベクレル(Bq)=0.02マイクロシーベルト(μSv)。

                           経口             吸入
セシウム(Cs)137        0.013(0.098)     0.0086
ヨウ素(I)131             0.016(0.093)     0.0082
ストロンチウム(Sr)90       0.035            0.006
プルトニウム(Pu)239     0.97          120.0

 これをみると、5歳から10歳時では、放射線が身体に与える影響が著しく高くなっていること、またプルトニウム(Pu)239は、経口、吸入とも換算係数は極めて高く、非常に危険な物質であることがわかる。個々の食事によって摂取したシーベルト値の算出については次回。

●1000マイクロシーベルト(μSv)=1ミリシーベルト(mSv)
 1000ミリシーベルト(mSv)=1シーベルト(Sv)

●参考までに、チェルノブイリ事故では、当時のソ連は生涯線量として350ミリシーベルト(mSv)を採用。これは1年間に5ミリシーベルト(mSv)を70年間取り込むものとして算出された。

●現在日本での一般人の許容値は1年間で1ミリシーベルト(mSv)、一生涯で100ミリシーベルト(mSv)となっている。1年間に受ける線量1ミリシーベルト(mSv)は、365日1時間当たりでは0.14マイクロシーベルト(μSv)となる。

●100ミリシーベルト(mSv)多く放射線を浴びるごとに、がんになる確率は0.5%づつアップする。

【解説】いい例えではないのだが、いま、アルコール濃度がそれぞれ5%のビール、10%のワイン、20%の焼酎があるとする。100ml入るコップでお酒を飲むと、ビールでは2ml、ワインでは10ml、焼酎20mlのアルコールが体内に入る。それでは、それぞれのお酒から1ml分だけのアルコールを摂取しようとすると、ビール50ml、ワインでは10ml、焼酎は5ml飲めばよい。つまりビール50ml、ワイン10ml、焼酎5mlはどれを飲んでも体内に入るアルコール量は等量で1mlとなる。この1mlを身体が吸収する放射線量(1シーベルト)と読み替え、ビール、ワイン、焼酎をさまざまな放射性の核種と読み替えると、「線量当量」という「シーベルト」の単位を理解することができる。どの核種でも生体に与える影響を同じにして眺めようというのがシーベルト単位の主旨。

 これによって、どんな線種でも1シーベルトは生体1kg当たり1ジュールのエネルギー効果を与えるという形で統一される。それぞれの臓器については、「組織荷重係数」がまとめられ公表されている。

 体内被曝では、放射線の吸収の仕方は、各線種によって異なっている。「放射線荷重係数」と呼ばれるもので、β線やγ線の1に対して、α線やあるエネルギーの中性子線は20。つまり受けた放射線量を核種によって、これだけを重くみる。

 “アルコールの濃度”に相当する核種の放射能は、それぞれ1グラム当たり、米に蓄積しやすいストロンチウム90で5兆3000億ベクレル、筋肉に入りやすいセシウム137で3兆6000億ベクレル、牛乳に入りやすいヨウ素131は4兆6000億ベクレルとなっている。

(多摩大学名誉教授 那野比古)