第12回「早急なHPの立ち上げを奨める~ドメイン名は商標権に優先~」
2010年01月27日
ベンチャー企業など何か新しい事業をスタートさせる場合、新たなリスク回避策として、なるべく早くHP(ホームページ)を立ち上げる必要がある。軌道に乗り、当該企業が生み出す製品・サービスの知名度向上を図ろうとし始めた段階になってのHP立ち上げは、サイバースクワッピングによるとんでもない妨害を被るリスクがある。それはHPのドメイン名(通称アドレス)は、特許と同じく先願主義に基づくことに起因する。同一ドメイン名を先に登録されてしまう危険性があるのだ。
サイバースクワッピングは、同一ドメイン名のサイトを先に立ち上げることによって、企業名や製品・サービス名をかたった不正なビジネスを展開したり、悪質なサイトにユーザーを誘導したり、企業や製品・サービスの信用を破壊するといった行為をいう。時には高額でドメイン名を買い取らせるといった行動に出る。しかし、悪意のない同一ドメイン名の取得とされた場合には、対抗する手段がない。企業や製品・サービスが著名であり、ブランドとなっている場合でも例外ではない。商標権はドメイン名をカバーしない。そのいい例が、世界的に著名なイタリアの超高級車メーカー、アルファロメオ事件である。
この事件は、ALFAROMEO.jp、ALFALOMEO.co.jpというドメイン名を先取されてしまったもので、アルファロメオ側は、登録商標であることを理由にそのドメイン名の自社への移転を求めた。これに対して、日本知的所有権仲裁センター(JIPAC)は、既登録人が、このドメイン名を不正な目的に使用しているとはいえないとして移転を認めない判断を下している。不正使用の立証責任は異議申し立て側にある。既登録人が「アルファロメオの大ファンだから・・・」と言われてしまえばそれでおしまい。しかし、まぎらわしいドメイン名の存在は決してプラスに働くものではない。HP戦略にはくれぐれも注意をお願いする。
(多摩大学名誉教授 那野比古)