第三部(参考) 第三部(参考)  I 企業価値
T 企業価値

 資本政策の立案過程において、企業価値は決定的な要因であるのだが、ではその「企業価値はどうやって決定するのか?」については全く難しい問題になってしまう。初めに結論を述べてしまうようだが、資本政策において企業価値を一義的に算定することはできない。しかし、資本政策の立案過程において対象とする企業の置かれた状況、投資条件、登場人物等の組み合わせが、企業価値にどのような影響を与えるかを知ることは有意義であり、重要な資本政策をより満足できるものに仕上げるために深い洞察が必要であることを知って欲しい。

1.資本政策にはファイナンス(資金調達)の戦略・所有関係の調整・株式の流通性に対する戦略等考えていかねばならない課題は多いが、未公開会社の資本政策の場合は特に「所有関係」と「どの時点でキャピタルゲインを得るのか?」というポイントは重要である。

 前者の「所有関係」のポイントについて企業価値(ここで用いる企業価値は後述の「Intrinsic Value」のこと)と資本政策を考えると、両者は互いに影響を与えることに留意しなければならない。つまり、まず「どの時点で実現する(と見込まれる)企業価値を誰がいつ所有しているのか?」ということについて考えをまとめなければならない。スタートアップの時期は通 常は企業価値が低く、この時点で第三者から資金を大量に調達すると、オーナーシップに関して大きな影響を与えることになる。アメリカでは、優先株式を用いて普通 株式と大きな価格差を設けて、資金調達目的を果たしながら所有関係には大きな影響を与えないような方法がしばしば採られる。スタートアップ期のベンチャーは属人制が高く、機動的な意思決定と行動を行わなければならないので、所有支配の関係が安定していることは重要である。しかし、一方でVCなど外部の投資家にとってこのような所有支配の状況は不安定な関係ではあるが、投資契約や株主間協定等を用いて、スタートアップ期のベンチャー企業にとってクリティカルな意思決定に参加することはできるし、投資段階で約されたマイルストーンが達成できないときは経営権を奪首することもあり得る。我が国では、税務上優先株式の取り扱いがどうなるか分からないこともあり、優先株式を用いて、経営陣の株式(スウェットエクイティ)と大きなスプレッドを持たせる事例もまだ少なく、我が国の制度下での投資契約の条項の有効性についても議論があり、ファイナンス(タイミング、金額)と所有関係は一体のものとして考えていかねばならない。つまり企業価値が低い段階での第三者からの資金調達は、通 常オーナーシップに大きな影響を与える。

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