第一部 第二部  IV シェア
IV シェアに関する考え方

1. 利害関係者としての株主
 株式公開をしこうすると、株式会社(以下、「会社」という)を取り巻く利害関係者はきわめて多くなり、従来以上にオーナーがさまざまな利害関係者を意識して経営する局面が多くなる。「会社は、だれのものか」という問いかけは、利害関係者が多くなって、オーナーが利害関係者の「だれの利益のために」、「どのような経営をするか」という点で、判断に迷う場面が多くなっていることを反映したものあるといわれている。

 オーナーが株式を保有し、支配権を確立している場合には、オーナーの判断が会社の意思決定であるが、会社の資本金は均等な権利である株式に分割され、その持株数に応じて、議決権や配当権が与えられているので、株主がオーナーだけでなければ、すべての株主は資本を提供している会社の所有者と考えられる。株式が分散している場合には、会社の意思決定は株主の所有株式数に応じて決定される。したがって、株主は、オーナーがもっとも意識しなければならない利害関係者であるといわれている。

2. 資本調達とシェアの低下
 会社の意思決定は、最高の意思決定機関である株主総会で決議されて確定する。日常の意思決定は、株主総会で選任された取締役会が行うにしても、最終的な意思決定の権限を有するのは株主総会であり、その権限は原則として1株を単位として与えられている。したがって、会社に対する支配権は、それぞれの株主が所有している株式数の割合によって決まる。すなわち多数決で決議されるので、原則として過半数を保有することによって会社は支配できる。その結果、会社への影響力を維持しようとすれば、より多くの株式を保有しなければならないことになる。

 仮に、オーナーが会社の100%の株式を保有していた場合に、資本金と同額の資金を調達するため、現在の資本金を2倍にする倍額増資を行なったとすると、オーナー以外の他人がこれを引受れば、オーナーの持株比率(シェア)は50%に低下すると、すなわち、資金の調達とともに、増資後はオーナー1人の意思決定では、会社の意思決定ができない状況になる。自ら設立し、育てあげたと自負する会社であっても、オーナーのシェアが過半数に満たなければ、オーナーの意思決定だけでは、経営できないことになる。ベンチャー企業では、資金調達のための担保も人的信用も乏しい場合が多く、自らの事業計画を実現するために資金調達に苦労する場合が多いと思われる。このような場合に、増資による資金調達は、不足する資金を受け入れる意味では経営上大変好ましいことであるが、同時に会社経営の意思決定権が他人に引き渡されることも意味しており、会社が「自分の会社」から「みんな(利害関係者)の会社」に変化することにより、独断で経営することが許されなくなることも意味していることは、十分理解する必要がある。

 そもそも、株式を公開することは、その会社の株式を不特定多数の者が保有し、市場内外で自由に株式の売買を行うことによって、自然な株価が形成され、株式の円滑な流通がはかられることであり、すなわち特定の株主による会社支配が薄まり、その持株シェアを低めることになるのは、当然ともいえる。

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