第二部  I 資本政策の基本的考え方

1. 公開予定時期を決める。
 何はともあれ、最初に決定すべきは、株式公開予定時期である。社長を始めとする役員従業員の士気に大きく影響する。株式公開予定時期を今から何年後とするかは、株式公開直前2期間株式移動に関する制約があるので、安定株主対策を講じるためにも、また従業員持株会やストックオプションなどのインセンティブ制度をじっくり考える意味でも、3年後を目途とするのがこれまでの主流であった。Mothers市場ができてからというもの、その流れも大きく変わりつつあるが、無理な利益計画を立てて従業員が苦しむことはよくないが、少し頑張れば達成できる利益計画を策定し、公開基準を充足する利益を無理なく計上できる決算期を公開直前決算期とするのがよい。実際に株式公開できる時期は、会社が策定した利益計画の達成状況、公開審査の進み具合、株式市場全体の動向等の諸条件によって変わってくるので、確定しておくべきは、株式公開予定時期の直前決算期ということになる。

2. 現時点での株価を算定する。
 相続対策等で事前に自社の株式価値を算定している場合は問題ないが、そうでない場合には、顧問の先生に依頼をして、直ちに会社の株価を算定してもらうべきである。以後、資金調達や増資の検討をする際の株価決定の基礎となるからである。株価算定の方法には幾つかあるが、いずれの方法でも、会社が成長し、多くの利益を計上していけば株価は自然と高くなる。これは過去においても同様であり、同族株主間、役員間で株式シェアを調整するために株式の移動を行う場合、安易に額面やそれに近い価格で行うと、会社の株価が意外に高くなっていて、贈与等の税務上のトラブルに発展することも多く、注意が必要である。

3. 同族株主間、役員株主間でのシェア調整を行う。
 これが特に必要となるのは、短期で株式公開を実現しようとする場合や、役員の貢献度と持株シェアが大きく相違する場合である。株式公開を短期で実現しようとすると、授権資本枠の拡大、取締役の増員といった定款を変更すべき事項が生じた場合に、定時総会前に臨時株主総会を数回開催し、定款変更のための特別決議を行わなければならないことがある。このような場合に、いったん社長に株式を集中させ、一人会社とすることで、会社の意思決定を迅速に行う方法もある。また、同族以外で業績に対する貢献度の高い役員が株式を保有していない場合には、適正シェアの株式を持たせることで、本人のインセンティブになるだけでなく、役員離脱のリスクを回避し、会社業績を側面的に担保するので、公開審査でも歓迎される状況を作ることができる。

戻る 次へ