第一部  II ミドルステージ

 中村は、資本政策とは会計に関することではないかと思い、それならばと、以前ベンチャープラザで名刺交換した公認会計士のことを思い出し、とりあえず電話してみることにした。

 公認会計士に電話すると「一度お会いし、お話を伺わせて下さい」と言われ、社長は、監査法人がどんな業務を実施しているかも、よく分からないまま会うことになった。

 当日、社員・公認会計士と名刺に書かれた達村公認会計士と、田所公認会計士がやって来た。社長は二人に会社の概況を話し終わると、早速、証券会社から受けた課題について、相談してみた。以下はその時の中村と達村・田所公認会計士とのやり取りである。

 達村公認会計士「社長、資本政策と組織図について当監査法人は、アドバイスすることは可能ですが、そのものを作成することは実施しません。なぜなら、資本政策や組織図は御社の事業戦略として考えるべき事項だからです。つまり、御社の事業戦略における財務戦略として、資本政策を考えていくべきであり、組織についても、株式公開準備を含め、今後の事業展開を誰が、どのように実施していくかを考えるべき事項なのです」

 社長「確かに、株式公開を人から勧められてその気になったが、事業戦略として位置づけて考えていなかった」

 達村公認会計士「株式公開にはメリットもデメリットもあり、御社の事業戦略において、株式公開をどのように活用していくか考えていくことが一番重要です」

 社長はなるほどと肯きながら、「今後の事業展開については、3ヵ年計画を立案している。しかし、この事業計画には株式公開を踏まえた事業展開までは考えていない」。

 田所公認会計士は、事業計画書に目を通しながら「御社の事業計画は非常に魅力的であり、株式公開を実現できれば、さらなる成長戦略を展開することが可能ではないでしょうか?」。

 社長「この10年間で、会社の経営基盤は確立でき、販売実績も伸びている。今後、新たな事業展開には、開発体制の強化、生産設備の増強、コストダウンの実施が必要となってくる。とくに、当社の一番の強みである開発力については、優秀な人材を確保していくことが急務だ」

 田所公認会計士「株式公開することにより、財務基盤の安定性が増し、優秀な人材を確保することが可能になってきますし、優秀な人材を引き留めることも可能になります」

 社長「株式公開により、外部の資金が調達できれば、財務基盤の安定性が増すことは理解できるが、優秀な人材まで確保でき、また、引き留めることが可能なのかね?」

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