第一部 第一部  II ミドルステージ
II ミドルステージ(インセンティブプランを中心とした資本政策の物語)

1. 株式公開への決意

 アロー株式会社の中村社長は腕組みをして考え込んでしまった。

 さきほどの証券会社とのミーティングで「社長、株式公開を目指すなら、まず、資本政策と組織図を提示して下さい」と言われ、どのように対応してよいか皆目検討が付かない状況となってしまったからである。

 アロー株式会社は、LANのハブを製造・販売し、創業10年目で年商200億円、経常利益12億円、税引後利益7億円を計上するまでの会社となっていた。台湾には100%出資の子会社もあり、現地で開発し、提携先の工場で生産し、日本から販売する事業形態を採っている。何といっても競合他社に比べ、開発力の速さが特徴で、ここまで業績を伸ばしてきた会社である。

 証券会社から、「社長、株式公開を目指すべきです!」とのアドバイスを受けていたが、 社長「一代でここまで築いてきたが、株式公開はまだまだ先の話」と考えていた。しかし、取引銀行からも株式公開を勧められ、ベンチャーキャピタルからも連日連夜電話がかかってくるようになった。

 証券会社から近年の株式公開状況を聞き、「当社より利益規模が小さい企業も公開している」ことが分かり、次第に興味を持ち出してきところであった。その時、証券会社から「当社の公開引受部と一度会って頂けないでしょうか?」との話があり、早速ミーティングをセットしてもらったものの、「資本政策という言葉は聞いたことがないし、現状の組織図はあるものの、株式公開に向けた組織図といわれても、どのように整備してよいかのポイントすら分からない」状況であった。

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