ベンチャー白書一覧

》2018年12月14日
『ベンチャー白書2016』、『ベンチャー白書2017』の販売について

2018年11月16日に『ベンチャー白書2018』(日本語電子版)、

2018年12月13日に『ベンチャー白書2018』(日本語冊子版)の販売を開始いたしましたが、

『ベンチャー白書2016』、『ベンチャー白書2017』も引き続き販売しております。

 

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  『ベンチャー白書2017』(日本語冊子版)はこちら

  『ベンチャー白書2016』(日本語冊子版)はこちら

 

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》2018年12月13日
ベンチャー白書2018(ベンチャーニュース特別版) 無償配布

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)では『ベンチャー白書2018 ベンチャーニュース特別版』を取りまとめました。下記から無料でダウンロードできます。

※ベンチャー白書2018から分析編-第四章(ベンチャー企業向けアンケート調査)、付録(政府・関連団体のベンチャー支援)、年表(イベント、大型調達、IPO、時事 )を抜粋したものです。

 

  ベンチャー白書2018ベンチャーニュース特別版.pdf

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なお、日本のベンチャーキャピタルの投資動向等については、『ベンチャー白書2018』で解説しています。詳細につきましては、こちらをご参照ください。

》2018年11月30日
ベンチャーキャピタル投資動向調査 (直近四半期 2018年3Q)

VECで四半期ごとに実施しておりますベンチャーキャピタル投資動向調査の2018年
第3四半期(2018年7月~9月)調査の結果がまとまりましたので、ご報告致します。

 

  2018-3Q.pdf

 

》2018年11月26日
ベンチャー白書2017(ベンチャービジネスに関する年次報告書)の販売について

2018年11月16日に『ベンチャー白書2018電子版』(日本語)の販売を開始いたしましたが、『ベンチャー白書2017』も引き続き販売しております。

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》2018年11月16日
ベンチャー白書2018 ベンチャービジネスに関する年次報告(電子版)

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》2018年11月13日
コラム-ヨーロッパにおける起業家教育事情-

ヨーロッパにおける起業家教育事情

 

理事長

市川隆治

 

                        

全体で300ページを超える”Entrepreneurship Education at School in Europe”レポートの表紙

 

 ヨーロッパにおける起業家教育全般については2016年の ”Entrepreneurship Education at School in Europe” レポートに詳しい。全体で300ページを超える大作であり、後半には各国別の報告もある。

 同レポートによれば、ヨーロッパで最初に起業家教育の重要性を指摘したのは2003年の “European Green Paper on Entrepreneurship in Europe 36” ということである。シリコンバレーが花開いたのが1980年代ということを考えると意外に遅かったと言えるのではないか。これが教育と起業文化の発展とをリンクさせた最初のEUの政策提言であるという。

 

 エストニアの教育改革については既にコラムで触れたところであるが、このレポートの国別報告においてもエストニアは光っている。「起業家教育は小中高レベルで一般的能力及びカリキュラムをまたがった目標として明示的に国のカリキュラムの中で認識されている。」「国のカリキュラムにおいて、起業家教育の学習成果は次のように定義されている。

・  小学生レベルでは、例えば、モノを買うにはお金を払う、お金は仕事をして稼ぐということを

   理解し、また、他の子と協力するノウハウを学ぶことが期待される。

・  中学生レベルでは、例えば、異なる教育レベルの人たちの労働市場における機会を理解し、また、

     所有者、起業家、雇用主、従業員や失業者となることの意味を知ることが期待される。

・  高校生レベルでは、例えば、職業選択のひとつとして起業があることを理解し、また、自分たちが

     起業家となることが可能であることを理解することが期待される。」

 そして、先生に対する教育やサポートも重要ということで、国や関係機関が支援していると報告されている。

 日本の小学校でそのような教え方をしているだろうか?日本の高校生が職業選択のひとつとして起業家を考えているだろうか?このように考えると背筋が寒くなる。

 

 スウェーデンではどうだろうか?同レポートでは、スウェーデンにおける起業家教育の学習成果としては、次のようなことを学ぶ機会となるべきであるとしている。

「  ・  個人、組織、企業及び社会にとって起業が何を意味するかを理解する。

     ・  アイデアを、プロジェクトをスタートさせるための活動に変える能力を養う。

     ・  プロジェクトを実施し、ベンチャー企業を運営する能力を養う。

     ・  プロジェクトやベンチャー企業を完成させ評価する能力を養う。

     ・  アイデアや製品がどのように法律やその他の規制によって保護されているかを学ぶ。

     ・  ビジネスメソッドを活用する能力を養う。」

 もちろん先生に対する教育は重要であり、資金的支援も含め、国の機関が起業家教育を発展させるべく学校をサポートし、促しているとしている。

 さらに大学レベルにおける起業家教育については、特にスウェーデン西部のヨーテボリにあるChalmers School of Entrepreneurshipが有名である。本年10月に名古屋大学で開催されたEDGE-NEXTの東海カンファレンス2018において、同SchoolのMats Lundqvist教授の話を聞く機会を得た。私が「スウェーデンに着任していた約30年前には同国で”entrepreneurship”という単語を聞くことはなかったが」と問いかけると、「それはそのとおりで当時は起業という発想がなかった。自分が教えている”Entrepreneurship”を冠した Schoolも1997年に発足させた」との回答であった。私は1992年にスウェーデンを離任しているので、その5年後ということになる。さらに、スウェーデンの起業家教育の内容は米国流を踏襲したものかと問うと、自分も米国で学んでおり、米国の流儀を基礎にしているが、ニュアンスが少し違うと言う。ヨーロッパの価値観では起業家教育はValue for othersに力点が置かれているが、ここが米国ではValue for myselfに力点があるということだ。日本人の思考回路はヨーロッパに近いと言えるのかも知れない。

 

 このように、特に北欧における小中高レベルの起業家教育は戦略的に実施されていると同レポートは高く評価している。是非日本の現状と比較してみてほしい。

 

 なお、本年10月の同イベントでは同時に米国のバージニア大学のSaras Sarasvathy教授の講演もあったが、そこで面白いエピソードを聞くことができた。所謂「嫁ブロック」についてである。大企業に勤める夫がスピンアウトして起業しようと妻に言ったところ、妻がとんでもないと反対し、夫は先生に相談した。先生は、それでは奥さんを私の授業に連れてきなさいとアドバイスし、奥さんは授業を受けに来るようになった。結果、奥さんの方がentrepreneurshipに熱心になり、彼女がstart-upを設立したと言うのである。

 

 フランスではどうだろうか?在京フランス大使館の書記官からは、フランスのエリート中のエリートを育成するグランゼコールの卒業生たちがベンチャーに目を向け始めたと聞いたし、グランゼコールの授業にentrepreneurshipが取り上げられるようになったという話も聞いた。”entrepreneur” は元々フランス語であり、先祖帰りとも言うべきかも知れない。

 そこでグランゼコールのひとつ、パリ政治学院(Sciences Po)のホームページを覗いてみると、

”l’entrepreneuriat” とか ”l’incubateur” とかのフランス語の文字が躍っていた。さらに細かく見ていくと、全体がフランス語の中に ”lean start-up” とか ”design thinking” とかの英語がそのまま使われている。前者については、GTEで米国人の先生が教えているこの世界では定番の理論であり、後者も英米では最近もてはやされている考え方である。パリ政治学院でも米国流の教え方を取り入れているのである。そういえば、Station F でも公用語は英語と聞いた。日本在住のフランス人に聞くと、start-up の世界でことばが英語になるのはしかたないが、少し残念だと吐露していた。

 もっとも、英国とフランスは地理的にもお隣で、歴史上もブルターニュ公国を取ったり取られたりの関係がある。”beef steak” を語源とする ”bifteck” はフランス語の辞書にも載っていて、その歴史の名残であると聞いたし、最近では単語の短さから駐車場をそもそものフランス語である “parc de stationnement” というより “parking” と英語を使ったりもする。逆に “~ment” という英単語はだいたいフランス語から来ていると聞いた。

 

 本年10月11日にStation FによるSchience Poの学生に対する説明会があった。そこで本人もSchience Poの卒業生であるLa directrice de Station FのRoxanne Varza女史は、米国での経験を振り返り、「カリフォルニアでは飽和状態になりつつあるとの感じを持った。フランスに帰ってみると、この分野はまだ新しく、すべてが構築途上であり、自分が影響を及ぼす余地があると感じた。フランスのエコシステムは様々な挑戦に直面するが、それが自分にとって魅力と感じた。米国ではいささか粗野な文化が支配的であるが、フランスでは健全さを感じた。2009年にフランスに帰ったときには大学で起業家教育のプログラムはほとんどなかったし、インキュベーターを有している大学も限定的であった。今やそれらはすべての大学に備わっている!すばらしいことだ。」と述べている。

 

 理系のグランゼコール、Ecole Polytechniqueについては、ホームページで「2017 Rapport Annuel」(2017年年次報告書)を読むことができる。その冒頭の「当校の3本柱」のところでは、研究、教育の次に「L’Entrepreneuriat」(Entrepreneurship) が掲げられている。そのページを要約すれば次のとおりとなる。

 「Ecole Polytechnique は、アクセラレーター及びインキュベーターを活用し、健康、安全及び経済分野におけるテクノロジーのあるプロジェクトを支援している。当校のスタートアップは国際的にも注目を集めている。また、当校はスタートアップと産業界の結びつきを強化するために「club des industriels」(Corporate Club)を立ち上げた。」

 

                            

Ecole Polytechnique2017年年次報告書の表紙

 

そして、具体的な成果として次のような数値を掲載している。

・  2010年以来250社以上のスタートアップが創設された。そのうち36社は当校キャンパスに設立され

     ている。

・  2017年に18社のスタートアップがアクセラレーターを活用した。

・  2017年に22社のスタートアップがインキュベーターを活用した。

・  200人以上の雇用創造が生まれた。

・  過去10年間で当校学生により創設されたスタートアップの評価額は2億5千万ユーロ(約325億円)

     にのぼる。

・  2017年に当校のスタートアップは5千7百万ユーロ(約74億円)の資金調達をした。

・  「club des industriels」(Corporate Club)に6社の企業がパートナーとして参加した。

 

 このような状況がかつてのフランスの状況から想像できるだろうか?Ecole Polytechniqueといえば、ジスカール・デスタンをはじめとして3人の大統領を輩出し、ノーベル賞受賞者、それに大銀行や大企業の幹部を約束されるエリート校の中のエリート校である。カルロス・ゴーン氏も卒業生である。その学生たちが今やベンチャーに目を向け出したということである。そして既存の企業も「club des industriels」(Corporate Club)に参加することでその後押しをしている。

 

 EDHEC(フランス北部のリール市にある経営学グランゼコール)については、2016年6月24日付のLe Figaro Etudiant紙の次のような報道があった。

 2016年5月に経営学グランゼコール入学準備クラスの2,930人の学生に「何を夢見るか?」とのアンケートを実施したところ、フランスの大企業でサラリーマンとして働くのではなく、国際的、もしくは人間的な規模の企業で起業家となることを夢見ているとの回答であった。2014年のアンケートでは創業者もしくはフリーランスとなりたいという学生は22%に過ぎなかったが、今回の2016年調査ではそれが36%になった。アンケートを実施したNewGen Talent Centre de l’EDHECの先生は、「これは重要なことである。学生たちが夢見ているのは企業との間の無期雇用契約ではなくなっているということだ。」と述べている。

 実際、EDHECに私からメールで質問表を投げてみると、「同校では既に2009年から起業家教育を始めており、今年は18か国から78人の学生がEntrepreneurship & Innovationクラスに参加している。学習内容は国際水準に照らして最高のものである。4年生に特別コースがあるが、その学生の25%が起業している。また、フランスにおいては、高校段階での起業家教育も盛んになってきている。」との回答が寄せられた。

 

 ヨーロッパにおける起業家教育の現状は日本にとって大変参考になろう。米国の周回遅れで、米国のやり方を導入しながら起業家教育を始めているが、日本より半歩進んでいるように思える。米国の流儀をそのまま受け入れているようで、ニュアンスが少し違うと言う。自分が儲けるということより、社会を変えるという意識が米国より高いということではなかろうか。この方が日本人の感性には近いような気がする。

 

》2018年09月13日
ベンチャーキャピタル投資動向調査 (直近四半期 2018年2Q)

VECで四半期ごとに実施しておりますベンチャーキャピタル投資動向調査の2018年
第2四半期(2018年4月~6月)調査の結果がまとまりましたので、ご報告致します。

 

  2018-2Q.pdf

 

》2018年08月21日
ベンチャーキャピタル等投資動向調査(2017年度速報)

「2017年度ベンチャーキャピタル等投資動向調査」の速報をVECベンチャーニュース(平成30年第28号)として発行いたします。

  VECベンチャーニュース(平成30年第28号)-2017年度速報-.pdf

》2018年08月10日
コラム-GTE2018-

GTE2018

 

理事長

市川隆治

 

 早いもので毎年和歌山でこの時期に開催される一般社団法人カピオンエデュケーションズ主催のGTE (Global Technology Entrepreneur) も今年で3回目となった。引き続きVECは協賛団体として参加している。

 7月30日に米国人1名、英国人1名、フランス人1名を含む25人の高校生が和歌山、紀三井寺近くの温泉旅館に集合した。今年の特徴は、日本人高校生の方もインターナショナルスクールの生徒や名だたる有名校の生徒が勢ぞろいし、英語のhearing & speaking能力が優れていたことである。とはいえentrepreneurshipの教育は受けておらず、いずれの生徒も初めての体験に戸惑いながらも多くを学んだようである。募集段階では最大生徒数25名に合わせるため、同じ高校からの参加人数を絞らざるを得なかったと聞いている。

 もうひとつの今年の大きな特徴は、第1回目の直後に書いたコラム「学び方革命」で期待したことであるが、日本の私立高校の先生2名が授業参観にわざわざお越しいただいたことである。お二人ともシリコンバレー流の起業家教育のやり方に目を見張り、興味深く見ていただいたようである。

 

①

ジャストン先生の講義は速いので目が離せない

 

 緊張を強いられる講義とエンタテインメントの絶妙な組み合わせについてはすでに触れたところであるが、今年は2日目の午後がボーリングに充てられた。これで初めて顔を合わせた同志が一気に打ち解け、お互いの性格分析もできたようである。来年はさらに盛り上げ効果の高いドッジボールにしようかとの声もあった。

 ゲームをうまく活用することについてもすでに触れたが、毎年同じゲームもあるが、新作ゲームの取り入れもあって楽しみだ。今年最も生徒たちが熱中したのは、4日目の午後に実施された「タワー建築ゲーム」であろう。タワーと言ってもおもちゃのタワーで最終的には高さを競うのであるが、問題は棒や継手といった部品が少しずつ入ったビニール袋を競売にかけるという点である。各チーム100ドルずつの手持ちで、ほしい袋に手を挙げて10ドルとかオファーするが、別のチームが11ドルとオファーし、だんだん値が吊り上げられていく。チームによっては早々に100ドルを使い果たし、競売に参加できなくなってしまう。部品袋がなくなると制限時間内にタワーを建築する。一斉に手を離したときに基礎が脆弱なタワーは倒れてしまう。そして、最後にこれが競売プロセスなのだとの解説がつく。

 初日の夜に実施された「Brain-writing」も面白かった。まず生徒に1枚ずつ渡された白紙の真ん中に自分の関心のあるテーマを書かせる。次に自分の紙を隣の生徒に渡し、周辺にコメントを書き込ませる。それで3回紙をチームの全員に回す。通常のBrain-stormingだと声が大きい者が支配的になるが、これだと静寂の中をチームのメンバーが何に関心を持っているか、また、それに対してどう他のチームメイトが感じているかを分かり合うIdea Challengeの一環のゲームということであった。

 さらにチームメンバーの割り当てが発表された2日目の朝には「Mind Mapping」が実施された。真ん中の自分の関心のあるテーマに紙を回しながら周囲に他のチームメイトがコメントを書き込んで行き、ひととおり書き終わったところで似通ったコメントを色別にクラスターとして囲んでいく。こうしてチームメイトの考え方を把握し、team buildingがなされていく。

 

 ②

はじめの頃の和気藹々のグループディスカッション、この後だんだん顔が真剣に変わっていく

 

 それ以外にも確実に起こす目覚まし時計のアイデアやエナジードリンクの設計等、なかなかチームでひとつのプレゼンテーションテーマが煮詰まらない中で、ポンポンと軽い共同作業をさせ、プレゼンテーションの準備運動をさせていく。

 プレゼンテーションのリハーサルは計3回行われたが、昨年のコラム「ふたたびのGTE」に詳述したような事細かな指示が飛ぶ。今年は特にジャストン先生の教え子で大学生になった2人(ミシガン大学生とプリンストン大学生)がアシスタントとして参加しており、彼らからも改善点の指示が飛んだ。

 過去2回の参加者の親御さんからは息子がしっかり自立するようになったとのうれしいコメントをいただいたり、参加した高校生が今年は大学生になり、スタッフとして参加したいとの申し出があったり、いまだ少人数ではあるが、教育効果といえるものが少しずつ現れてきている。これからの展開が楽しみである。

 なお、今般の通常国会で産業競争力強化法が改正され、創業支援施策が拡充された。これまでの創業支援事業に加え、創業機運醸成事業も補助対象となり、本件GTEも今年度から「和歌山市創業支援等事業計画」に位置付けられる予定で、国からの補助金を受けられることとなった。

 

③

 ビジネスプランコンテストも終了し、来賓の尾花正啓和歌山市長を囲んで記念撮影

 

 

<参考> 関連コラム

 

ベンチャー白書

ベンチャー白書2016  I-141ページ 「学び方革命」

ベンチャー白書2017  I-111ページ 「ふたたびのGTE」

ベンチャー白書2017  I-109ページ 「DECA」

 

ホームページコラム掲載

2016年08月12日「学び方革命

2017年01月18日「DECA

 

 

 

 

 

 

》2018年07月17日
アジア・スタートアップ通信 Vol.7 「杭州の躍進 」

アジア・スタートアップ通信 Vol.7

「杭州の躍進 」

 

杭州の勢いが止まらない。

中国のスタートアップ中心地と言えば、北京と上海、それを深センが追っている、というイメージを持つ人が多いかもしれないが、ここ数年で杭州が目覚ましい変貌を遂げており、まさに地殻変動が起きている。

 

China Money Networkによると、現在中国には137社のユニコーン企業(時価総額が10億ドル以上の未上場企業)が存在し、すでに米国を上回っている。その137社のうち87%が北京、上海、杭州、深センの4都市に集中し、時価総額でいうと95%を占める。

ユニコーン企業数でいうと北京は60社とぶっちぎりであるものの、それに続く上海(31社)の次にくるのは深セン(12社)ではなく杭州(16社)となっている。時価総額でいうと、今年5月に杭州に本拠を置くメガ・ユニコーン企業であるアントフィナンシャルが最新資金調達ラウンドで1500億ドルと評価されたこともあり、その影響で杭州のユニコーン企業の時価総額合計はなんと北京を上回っている。アントフィナンシャルの時価総額を除いたとしても、上海よりも大きい。

 

(「China Money Netwok」のデータをもとに筆者作成)

 

筆者は今年7月に杭州で開催されたTechCrunchカンファレンスで登壇するために杭州を訪れ、杭州の発展ぶりを肌で実感した。以下、なぜ杭州が上海の地位をも脅かすほどのスタートアップ中心地になってきているのかについて、いくつかの理由をまとめてみたいと思う。

 

アリババのお膝元

深センがテンセントのお膝元であるのに対して、杭州はアリババのお膝元である。アリババが杭州のスタートアップシーンに与える影響は絶大である。アントフィナンシャルを筆頭に、アリババクラウドや口碑、盒马鲜生、最近ではHelloBikeなどのアリババが出資する数々のメガベンチャーが勃興しており、一大経済圏ができている。これはアリババの巨大な資金力だけでなく、関連企業同士の好循環の事業シナジー、アリババや現地の名門校浙江大学のエンジニアリング人材が土台となっている。まさにアリババ城下町であり、アリババ会長のジャック・マー氏は市民にとって神格化された存在となっている。

 

②

(アリババ本社、筆者撮影)

 

地方政府の積極的なイノベーション政策

ここまでのスピードで発展したことの背景には、地方政府のトップダウンのイノベーション政策の功労が大きいと言われている。

例えば、杭州のシリコンバレーを謳うドリームタウン(夢想小鎮)は1,000社以上のスタートアップやアクセラレーターが集まる一大集積地である。起業家を取り巻くエコシステムが完備され、ここから多くのメガベンチャーが羽ばたいている。

 

③

(ドリームタウン、出典:Shanghai Daily)

 

また、地方政府は海外人材の誘致に非常に積極的だ。これは在外中国人の帰国組だけでなく、中国系以外の外国人人材も含む。杭州市政府は市内で起業する外国人に最高1億元(約17億円)を補助するなど、優秀な外国人材の誘致を推進する新政策を展開している。このような地方政府や地元企業の強力なバックアップもあり、杭州は2017年、人材純流入および海外人材純流入で中国の都市の中で首位となった

 

今回の杭州滞在中に、筆者は知り合いが創業したスタートアップを訪問した。この会社は元々アメリカで創業したものの、杭州市のスタートアップ誘致政策をうまく利用し、本社を杭州に移転した。以下の写真のようなおしゃれなプライベートオフィススペースが、杭州市の支援で1年目はなんと無償だというのだからすごい。スタートアップ誘致政策を行う地方都市は世界に無数とあるものの、杭州においては浙江省、杭州市、アリババなどの地元企業など様々な主体が他を凌駕する規模で集中的に支援政策を実行しており、それが実際うまく機能している。

 

④

(杭州のスタートアップのオフィス。筆者撮影)

 

上海への近さと生活環境

杭州は上海から電車で1時間の距離にあり、上海と杭州の人の行き来は頻繁である。金融および商業センターの上海との近さは杭州の一つの魅力である。杭州でスタートアップに勤務する中国人の若者によると、杭州は上海に比べてまだ家賃も安いので、起業に取り組む若者にとっては住みやすい街だという。そのため、最近では上海からも起業家人材が多く流入しているようだ。

自然に恵まれ風光明媚な杭州は、近場で休暇を過ごすにはうってつけの場所で、昔は上海のビジネスマンの裏庭的な位置付けにあった。しかし、今はスタートアップの勃興ぶりでは上海を凌ぐほどの勢いを見せている。何と言っても人口は杭州だけで950万人もいるのだ。

杭州は事業機会およびビジネスエコシステム、そして恵まれた生活環境の両方を兼ね揃えており、住民の幸福度指数は中国の都市で最も高いと言われている。中国の富裕層や海外で教育を受けた人たちは仕事だけでなく生活の質も重視するようになってきていることからも、杭州は今後も優秀な人材を惹きつけ、引き続き勢いを増していくことだろう。

 

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本コラムシリーズでは、サンフランシスコのフィンテック系スタートアップにて事業開発に携わる筆者が、シリコンバレーやアジアの起業環境・スタートアップ関連の生の情報をレポートする。

 

                                                                                                                      (吉川 絵美)