コラム-教育改革の方向-

教育改革の方向

理事長

市川隆治

 

 6月19日~21日に東京ビッグサイト青海展示棟で開催された「第10回学校・教育総合展」(リードエグジビションジャパン(株)主催)に足を運んだ。私自身、3月に「起業力教育に関する緊急提言」を発表し、日本経済新聞や日刊工業新聞に関連記事を掲載いただいていたので、現状の教育改革の方向を確認しておきたかったのである。

 

 ちょうど文部科学省から学習指導要領の改訂が発表され、来年から小学校でプログラミング的思考能力を育成する教育が始まるということで、小学生向けのプログラミング教育教材のブースに人だかりができていた。AIを活用した教育システムのブースにも人気が集まっていた。プログラミング教育はエストニアに遅れること30年でようやく来年から小学校で開始され、翌年中学校で、さらにその翌年から高校で、さらには2024年から大学入試に「情報I」が加わるということであった。AIを駆使するデータサイエンティストの育成が急務なのは疑う余地はない。政府の「AI戦略」においても声高に語られている。

 

 文部科学省の方や専門家の方々の基調講演、特別講演においてもひとつの正解だけを探す教育からの脱却や、active learning、脱偏差値教育、社会的課題への挑戦ということが熱く語られ、教育改革の方向としては同じベクトルであるとの印象を受けた。

 

 しかし、何か物足らない。それは「プログラミング」や「AI」は目的ではなく、手段でしかないからではないだろうか?それらを駆使して何をするかが重要であり、それは私はビジネスプランを作成し、スタートアップを起業し、社会的課題に挑戦することだと言いたい。もちろんすべての学生が起業家になる必要はなく、すべての学生が一度はビジネスプランの作成訓練を受けることにより、その面白さ、重要性を体感し、スタートアップのサポーターとなってくれることが重要であると考えている。すべての学生が科学を勉強しても皆が科学者になるわけではないが、科学のサポーターとなってくれているのと同じである。JAXAの研究者でなくとも、また、宇宙科学者でなくとも、「はやぶさ2」のニュースを聞くたびにワクワクし、成功を願うということである。あるいは、万一の場合に備えて水泳を学んでおくのと同じだと表現する大学教授もいる。確かにある日突然大企業が経営破綻に陥ったり、大企業の社員がリストラされたりということはよく耳にする。そのときに起業という選択肢があれば新たな人生が始まる可能性だってある。

 

 そしてそのビジネスプランの作成訓練は大学生では手遅れで、発想の柔軟な高校生までに一度は経験しておくことが重要であるというのが私の主張であり、そのために欧米の動向をしっかり調査すべきだというのが私の「緊急提言」である。高校生でビジネスプランの作成ができることは米国におけるDECA/ICDCに2万人の全米の高校生が参加していることから明白であるし、今年4月にははじめて日本の広尾学園の高校生がフロリダ州オーランドでのICDCに参加し、入賞を果たしたことから、日本の高校生でも教育の仕方によっては変わることができるということが証明された。欧州でも高校生レベルでの起業力教育が始まっていることは欧州委員会教育文化総局を訪問して聞いてきた。我が国も遅れをとってはならないと考えるのである。