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コラム-Latitude 59, 2018 そしてエストニア-

Latitude 59, 2018  そしてエストニア

 

理事長

市川隆治

 

 5月24~25日にエストニアの首都タリンで開催されたベンチャーの祭典:Latitude 59(北緯

59度の意味),2018は驚きの連続であった。

 

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会場のKultuuri-katelは1913年から79年まで中央火力発電所だった所で、大きな煙突も残っている

 

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昔の姿

 

 第一に、起業家や投資家等の総参加者数2,000人の中で日本人がなんと100人を超え5%を占めていた。従ってあちこちで日本語の会話が聞こえる状態であった。

 第二に、その中で二人の日本人がメイン会場でプレゼンをした。おひとりは高島宗一郎福岡市長で、福岡市はこのほかにもサンフランシスコ、テルアビブ、ヘルシンキ、台北などのイベントにも参加しており、今回は特に独自のピッチを実施し、優勝者には福岡での1年間の滞在ができるという賞品が提供されるということで拍手喝采を浴びていた。もうおひとりはserial entrepreneurの孫泰蔵氏で、既に柏の葉でスタートしているVIVITAの拠点(子供たちに最先端のテクノロジーを自由に使わせ、自分のアイデアをカタチにできるクリエイティブ・コミュニティ)を数か月の間にタリンにも開設すると発表し、これも拍手喝采を浴びていた。

 第三に、福岡市をはじめ、日本のベンチャーがいくつかのブースを開設していた。これだけ日本のプレゼンスのある外国のベンチャーイベントは他にはないのではなかろうか。それはe-residencyを取得してしまえば簡単に会社設立もできてしまうという世界最先端の電子国家というブランドが起業家たちに好評だということだ。タリンに拠点を置いて北欧で活躍する日本人VCの存在もある。

 既に10年目となるイベント全体にも他にはないユニークなものがあった。

 

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会場風景

 

逆ピッチ – 投資家を登壇させ、ピッチをさせる。3分間の制限時間が来るとここぞとばかりストップがかかる。そして質問の嵐。起業家が味わっているピッチの苦労を投資家にも味あわせようという趣向のようだ。

 スカイダイビング・ピッチ – 実際に起業家にセスナ機からのスカイダイビングをさせ、その最中にピッチをさせ、それをビデオに撮った映像を見せるというもの。風圧で口のまわりがぶるぶる震えながらの真剣なピッチはユニークな試みと思った。

 子供の登壇 – 母親の起業家が10歳の息子を登壇させた。堂々と自分の夢を語る姿にエストニアの未来は明るいと感じさせた。

 

 エストニアとの浅からぬ関係については「コラム-バルト3国の思い出-」(VECホームページのコラム2018年01月16日付)に記したところであるが、今回せっかく教育改革のお手本となるエストニアを26年ぶりに訪問したので、5月28日に教育省高官とお会いし、質問をぶつけてみた。

 すると概要次のようなことが分かった。1991年の独立の回復(Restoration of Estonian Independence:エストニア人にとって建国はロシア革命後の1918年であり、今年がちょうど建国100周年に当たる。)後に大胆な教育改革を断行した。ちょうどインターネットが普及した時期であったので、世界に先駆けてインターネット環境を全学校に提供し、プログラミング教育も始めた。一定の学力の水準の定めは国がしているが、それを達成する方法については各学校にautonomyを与えている。その方が学校が責任感を持って教育に当たるのでcreativityが発揮され、いい効果が得られる。また、生徒には16歳で基礎教育が終了する際に、creative assignmentを課すが、これは生徒各自が自由にエッセイを書くもので、自主学習を促す効果がある。

 最後の点はなるほどと唸らせた。事細かに国が指示するより、各学校の自主性に任せる方がいい。それでOECDのPISA学力調査テストで日本と並ぶ高得点が得られているのだ。そして16歳のcreative assignment。それでこそ生徒のactive learning、自主的な学ぶ姿勢が育まれているのではないかと理解した。

 

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「100」をデザイン化した建国100周年記念のマーク

特に空港周辺にはたくさん見られた

 

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27年前に訪れた首相府Stenbocki Majaは立派に修復されていた