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コラム-AI・人工知能EXPO-

AI・人工知能EXPO

 

理事長

市川隆治

 

 久しぶりに東京ビッグサイトを訪れ、「AI・人工知能EXPO」を覗いてみた。つい先頃まで「国際ドローン展」がベンチャーにとって最先端の技術展示会の位置づけだと思っていたが、もう今はAIが最先端であるとの印象を受けた。時の移ろいは激しい。同EXPOは既に第2回目の開催ということであり、AI“業界”と言っていいほどの300社が出展し、特別講演には3,000人が押し掛けるほどの盛況ぶりであった。

 

 展示ブースの内容は硬軟両様で、機械学習を自動化し、数あるアルゴリズムの中でどれが最適か、さらには目的を達成するためにアルゴリズムのハイブリッドを自動で作成してしまうというプラットフォームであるとか、素人目にも分かりやすい、椅子が振動したり傾いたりすることによりジェットコースター気分を味わえるゴーグル着用のVRゲーム機のようなエンターテインメントがあったりした。

 

 特別講演では、今売り出し中のスマートスピーカーの開発において、いかに音声認識の技術が難しいか、文脈的理解や言葉のローカルな使われ方(Dream comes trueを「ドリカム」とか)の認知に対応しなければならないかの説明があった。使うほどに賢くなるのがAIということになる。

 

 しかし、圧巻だったのは東工大の西森教授の量子コンピューターの研究開発についての話であった。冒頭、現在ITが消費する電力は世界の発電量の10%を消費しているといい、その効率化がいかに大事であるかを指摘し、量子コンピューターがそれに貢献できるとした。しかし、先生が極微細な素粒子の世界、「超伝導リング」では「0」と「1」の状態を同時に持つことができるという量子の特性を発見したとき、それをまさか計算に応用できるとは考えていなかったと述べられた。その後、欧米の科学者がコンピューターに応用すれば劇的に計算スピードを高速にできると考え、夢のコンピューターとも称される、現在の量子コンピューターの研究開発の流れができているということだった。これは正に、「研究開発で勝ってビジネスで負ける」という日本のR&Dの特徴そのものではないかと感じた次第である。先生は、量子力学の性質にはまだまだ分からないことが多く、量子コンピューターが高速性を発揮できるのも組み合わせ最適化問題という、ある限られた分野だけだと指摘し、過剰な期待はしない方がいいと控えめな発言をされていた。にもかかわらず、米国は最先端の研究開発をし、最近では中国が量子コンピューターを国家重点4大科学技術に位置付け、膨大な国家予算をつぎ込み米国を追い越さんばかりの勢いであるのに比し、日本の研究開発は遅れていると嘆いておられた。

 

 AIに限らず、日本の研究開発の弱点はビジネス化という視座が欠けていることである。そこにビジネス化に執念を燃やすベンチャーの発想が加わることにより、経済成長や雇用創造につながる新事業の創造が実現できるのではなかろうか。もしくは、小さい頃からの教育により、大企業や研究開発機関でR&Dを手掛ける研究者自身が、最初からビジネス化を踏まえたアプローチをすることにより、この課題は早く解決できるのではなかろうか。それには受け身の教育ではなく、みずから社会的課題を探索し、解決のために仮説を立て、検証するというactive learningを進めていくことが必要である。昨今話題となっている学習指導要領の改訂には一部その方向性が取り入れられているとは思うが、これを大々的に進めていくには教師自身を教育しなおし、発想を変えてもらうことが不可欠である。「未来の教室」とはどうあるべきかを真剣に議論する時期に来ていると思う