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コラム-ふたたびのGTE-

ふたたびのGTE

理事長
市川隆治      

 

 今年も(一社)カピオンエデュケーションズ主催のGTE2017 (Global Technology Entrepreneur 2017) が7月31日~8月4日、和歌山で開催された。

 昨年第1回目の感想は「ベンチャー白書2016」I-141ページの「学び方革命」に記しているので参照されたい。

 今年は少しバージョンアップし、昨年の3日間を5日間にのばし、3社ほど地元企業の視察を試みた。また、ジャストン先生の教え子の中でもとびきり優秀な生徒ふたりに来てもらい、日本人生徒とチームを作ってもらった。彼らは3年間にわたりジャストン先生の情熱あふれる授業を受け続けてきただけあって、日本人生徒とのギャップはあまりにも大きかった。ちなみにふたりの生徒の家庭環境が親が起業家というのもシリコンバレーならではの現象ではあった。日本人生徒の方は早口の英語と学習する内容が初めてということもあり、最初はガチガチに固まり、スタッフが日本語に通訳しても日本語ですら受け答えができない状態であった。日本の教育が自分の意見を人前で披露する訓練をしていないところからくる日米のギャップをまざまざと見せつけられた。日本人生徒のうちふたりは昨年も参加したリピーターであり、彼らは昨年よりは理解ができたと感想を述べていた。

 そのような緊張感をほぐすのに繰り出したのは昨年もあったが、体を使い、かつ、戦略がないと勝ち残れないゲームである。昨年よりもゲームの数は多かった。例えば、椅子に乗り、足を床に着けずに移動して部屋を出るというゲーム。その間一言もしゃべってはいけない。そうすると体重移動により椅子を少しずつガタガタと進めようとするが、あるときわざと余計に置いてある椅子を見つけた生徒がその椅子を持ち上げて自分の前に置き、スタスタとその椅子の上を歩いていき、空いた椅子を持ち上げて自分の前に置き、その繰り返しで容易に部屋を出ることができた。これはコミュニケーションと共同作業がいかに重要かを体験させるゲームであった。

 肝心のビジネスモデルについては、まずチームの中でビジネスモデルのアイデアを出させる。各チーム3~4個のアイデアが出たが、それぞれについて生徒同志で徹底的に討論し、一つに収斂させていく。先生はあくまでアドバイスをするだけで、どのアイデアにするかは生徒次第である。

 収斂したビジネスモデルについてプレゼンテーションするパワーポイントを作成するとリハーサルが何回も繰り返される。リハーサルの後のジャストン先生のアドバイスは実に細かいが、しかし、なるほどと唸らせるものばかりであった。曰く、アイコンタクトは重要で、審査員の目を見なさい。曰く、色使いが悪い(例えば黄色に白抜きの文字)と文字が目立たないので、色を変え、フォントサイズも大きくしなさい。曰く、しゃべり方は暗記の棒読みでなく、聴衆のエモーションに訴え、情熱を感じさせなさい。曰く、各チームメンバーのしゃべる時間がバランスが取れるように調整しなさい。曰く、例に挙げる人物が3人とも白人男性ではバランスが悪いので女性を入れなさい。曰く、プレゼンテーションの最後にチーム全員でキャッチフレーズを合唱したらどうか。

 このように10枚のスライド1枚1枚について厳しくコメントが飛ぶ。なるほどこのようにしてプレゼンテーションが完成していくのかと感心した。

 日本にいながらにして本場シリコンバレーの現役の高校教師からシリコンバレー流の起業家教育を受けられるGTEは今後とも継続していくべきであるし、それによって日本のスタートアップのレベルが向上し、起業家不足の汚名を返上できれば支援しているVECとしても本望である。

 

 最終日のプレゼンテーションが終了してから、ジャストン先生から一冊の本を勧められた-『SPRINT 最速仕事術』ダイヤモンド社刊の和訳版である。これはグーグルベンチャーで開発された、5日間でプロトタイプ作りや顧客による評価も終えてしまうという、文字通り短距離走のような最速の仕事のやり方である。人数は7人以内にしぼり、必ず意思決定者を入れる、5日間は他の仕事はシャットアウトし、スマホでの連絡は休憩時間のみ認める、等々。これをやっておけば無駄な投資を避けることができるという。スタートアップはスピードが命というが、これがその具体的なやり方なのである。ジャストン先生によれば、リアルなビジネスと生徒の学習訓練との違いはあるものの、5日間ですべてを終えるという点ではGTEもよく似ているということである。日本でも技術系ベンチャービジネスのスピードアップにもこんな手法を採用してみたらどうだろうかと思う。来年以降もGTEのSPRINTは走り続ける。