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コラム -ふたたびのむつ小川原-

ふたたびのむつ小川原

理事長

市川隆治

 

 5月12日に、新むつ小川原(株)のご案内で十年ぶりに青森県の「むつ小川原開発地区」を訪れる機会を得た。十年ひと昔、種々進展もみられたものの、東京の山手線の内側ほどの広大な開発総面積があり、用地取得や設備投資に対する補助金、さらには優遇税制も用意されており、今後ともベンチャーも含めた企業進出がmost welcome ということであった。

 

 車で走っていてすぐに目についた<進展その1>は風力発電である。十年前にも既に20数基の大型風力発電タワーが見られたが、それが今や100基を超えるという。当地は平均6m/sの安定した風力エネルギーがあるということで、風力発電の適地とされているが、100基を超えるとさすがに圧巻である。ドイツの大地を車で走ったときにあちらこちらに風力発電タワーが林立しているのをみつけて圧倒されたが、ここではそれと同じような感覚に襲われた。

 

 むつ小川原港にはこれから建設されるというドイツ製の風力発電設備の部品が20数基分横たわっていた。近くで見るとその大きさが実感できる。1.5メガワット級であれば、1枚のブレード(羽根)は35メートルの長さにもなる。1基当たり3枚のブレードがつくので、それが60数枚、さらに長いので3分割したポール部分や、扇風機のモーター部分に相当するナセル等々、地面に置いて間近に眺めると大きさに圧倒される。ちなみに風力発電の適地の要件のひとつに、それらを一時的に置くことができるスペースのある港が近くにあり、設置場所までそれらを運ぶことができる広い道路があるということが挙げられるそうだ。

 

 さらに、ドイツに次いで世界で2番目に2010年に作られたという「風力発電トレーニングセンター」には、本物のGE社製の中古の風力発電設備が中も見える形で展示されていた。ふだん70メートル上空にあるのを下から眺めているので小さくしか見えないナセルは、実は小型自動車くらいの大きさで、中に人が入って修理点検ができる。ブレードはゆっくり回りながらよく発電ができるものだと前々から疑問に思っていたが、ナセルの中で何段階ものギアで回転数を90倍にして発電しているということが分かった。風速によって発電量が変動するという欠点を補うため、NAS電池と組み合わせた施設もあった。

 

 <進展その2>は国内最大のメガソーラー発電設備である。しかも国家石油備蓄基地の隣接地も含め、何か所かある。これは十年前にはなかった。140ヘクタール一面に設置された太陽光発電パネル30万枚は壮観である。それだけ大量のパネルの点検のためにロボットやドローンを使うビジネスモデルを提案するベンチャーも出てきている。

 

 <進展その3>は、「国際核融合エネルギー研究センター」である。十年前にはまだ国際熱核融合実験炉(ITER)誘致のかすかな希望があり、草地に運動会で使う石灰で×印が記され、ここに炉心が来るという説明を受けたが、その後、実験炉本体は南仏カダラッシュに設置されることが決まり、六ヶ所村のかつての×印の近くには「幅広いアプローチ活動」として核融合工学研究施設が置かれることになったということである。現在スペイン、フランス、イタリアからそれぞれ開発した研究施設を搬入し、それらをつなげる組み立ての最中であった。設置される部屋は1.5メートルの厚さのコンクリートで覆われ、扉の重量だけで55トンもあるとのこと。実験が始まってしまえば人間は中には入れないところ、幸運にも内部を拝見できた。是非核融合エネルギーの実用化をめざして、初期の目的を達成し、日本の技術力の高さを証明してほしいものである。