シリコンバレー通信 Vol. 22 「IPOからICOへ〜イニシャル・コイン・オファリングが切り拓く資金調達の真の民主化」

シリコンバレー通信 Vol.22 

IPOからICOへ〜イニシャル・コイン・オファリングが切り拓く資金調達の真の民主化」

 

今話題のブロックチェーン業界でイニシャル・コイン・オファリング(Initial Coin Offering; ICO)への関心が高まっている。

 

ICOとは新しい仮想通貨を発行することによって、スタートアップやプロジェクトの資金調達を可能にするもので、従来のVC→IPOまたはM&Aというベンチャー投資のやり方を根底から覆す可能性を秘めた新たな動きとして注目されている。

 

ICOは以下のような仕組みになっている。

まず、ブロックチェーンを利用した新たな事業を始める起業家が事業概要を公開し、その事業を遂行するために必要な資金を明確にして、仮想通貨(トークン)を発行することで出資を募る。発行された仮想通貨は実際にその事業におけるサービスが開始された時にサービス利用のために使うことができる。また他の投資家に売ることも可能である。 つまりIPOやM&Aなどの大きなExitイベントを待たずして自由に売買が可能となる。

 

クラウドファンディングとは資金調達の対象を一般に広げたという意味では方向性は同じだが、従来の株式型クラウドファンディングが株式という既存のパラダイムを土台としたものであるのに比較して、ICOは株式という概念を取っ払い仮想通貨で代替するという意味で、資金調達の真の民主化を導きうる、別次元のパラダイムである。

 

 

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ICOは起業家と投資家の双方にメリットを提供する。起業家にとってはVCなどの限られた投資家だけでなく将来のユーザーを投資家として取り込むことができ、さらに実際のサービスの利用を促すことができる。また、近年上昇している株式のIPOに関わるコストも回避できる。投資家にとっては、IPOやM&A等のExitイベントに依存せずにトークンを売買できる投資環境がある他に、サービス利用のために使うこともできるというメリットがある。またIPOのためのコストも株主として負担せずに済むことになり、投資回収がよりフリクションレス(frictionless)なものとなる。

 

Wiredによると、ICOによって過去14ヶ月の間に60以上のスタートアップやオープンソースプロジェクトが、総額2億5,000万ドル以上の資金調達を行ったという。中には仮想通貨そのものの開発のためのプロジェクトもあれば、仮想通貨を利用したサービスを開発するスタートアップ、または仮想通貨の開発とは直接は関係ないものもあり、ICOの適応範囲は広がってきている。例えば、サンフランシスコ拠点のBlockchain Capitalというベンチャーキャピタルは独自のトークンを投資家に売却することでファンド資金を調達するという先進的な試みを行っている。つまりブロックチェーンのスタートアップだけでなく、ベンチャーキャピタルすらもICOする時代となったのだ。

 

近年のブロックチェーン革命は、「取引摩擦を無くすことで取引コストを飛躍的に低減する」という側面がある。ベンチャー投資における「摩擦」もICOによって取り除かれる可能性がある。もちろんすぐにICOが全てを代替することは不可能だが、徐々に可能なところから広がっていくこの動きは止められないだろう。

 

 

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本コラムシリーズでは、サンフランシスコのフィンテック系スタートアップにて事業開発に携わる筆者が、シリコンバレーの起業環境・スタートアップ関連の生の情報をレポートする。

 

(吉川 絵美)