シリコンバレー通信 Vol. 21 ブロックチェーンで「つながる」

シリコンバレー通信 Vol. 20 ブロックチェーンで「つながる」

 

直接知り合いではないけれど、どうしてもあの人に連絡を取りたい。

それは営業のためかもしれない、ヘッドハンティングのためかもしれない、はたまた投資家へのアプローチのためかもしれない。

 

一昔前だったら、誰かに紹介を頼むか、連絡先をなんらかのルートで突き止めて電話するか待ち伏せするか、という手法しかなかっただろう。

 

プロフェッショナル用のソーシャルネットワーク、LinkedInの有料サービスであるInMailが登場してからは、つながっていない相手でもLinkedIn 上でメッセージを送ることができるようになった。特に欧米のヘッドハンターの間ではInMailは必須ツールとなりつつある。

 

しかし、ちょっと待てよ・・。なぜ繋がりたい相手に連絡するためにLinkedInにわざわざお金を払わないといけないのか?ネットワークを作って維持しているからというのはあるだろうが、そもそも繋がりたいと思わせる個人が価値があるわけなのに、その個人は何のおこぼれにも預かれないのはそもそもおかしくないか?

 

そこで浮上してきたのが「ブロックチェーンを利用して繋がりたい相手に直接連絡することができる仕組み」だ。ブロックチェーンとは最近注目を集めている分散型台帳技術のことで、中央集権化されたデータベースではなく、分散型ネットワークでデータが共有される仕組みである。その代表的なものがビットコインのブロックチェーンである。

 

ビットコイン関連スタートアップの21Inc. は、このブロックチェーンを利用して、「知らない人でも、その人に直接ビットコインを支払うことでメッセージを送ることができるサービス」を提供している。10%の手数料は21Inc.に支払われるとのことだが、値段はメッセージを受け取る個人が設定できる。例えば、著名ベンチャーキャピタリストのBen Horowitzは$100 と設定しているという。もちろん、これはメッセージを直接送ることができるというだけで、返事を保証するものではない。しかし、これだけのお金を払ってまでしてメッセージを送ったのだから重要な内容に違いないというシグナリングになる。

 

21Inc

(Source: 21Inc. ウェブサイト)

 

受信ボックスがメールで溢れる中、送信者の「重要フラグ」ぐらいしか、重要度のスクリーニングをすることができないというのは、確かにおかしいのかもしれない。ここに経済原理を導入することで、価値があると思われる情報がより優先され、効率的なコミュニケーションができるようになるのだろう。

 

Replace your public email with an inbox that pays you(外向けのメールは集金可能な受信ボックスで置き換えましょう)”と21Inc. は語る。さらに受け取ったビットコインをチャリティに寄付できる仕組みも提供している。高い額を集金して姑息だなあと思われたくない著名人にはうってつけかもしれない。

 

上記のユースケースはブロックチェーン用途のほんのひとつである。これまで個人のコンテンツを握って、それを独占的に広告や有料サービスの提供によってマネタイズしてきたFacebookやLinkedInに対して、ユーザーの視線は年々厳しくなってきている。このような中央集権型のネットワークではなく、自分のコンテンツは自分の所有物として自分でマネタイズ出来る仕組みをブロックチェーンは提供するのだ。

 

ブロックチェーンというと送金用途などが注目されがちだが、実は中央集権型ソーシャルネットワークの分散化という根本的な変革の可能性を秘めている。現在ユーザー情報のマネタイズで潤っているソーシャル系企業は大きなディスラプションに直面している。

 

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本コラムシリーズでは、サンフランシスコのスタートアップにて事業開発に携わる筆者が、自分の意見を踏まえてシリコンバレーの起業環境・スタートアップ関連の生の情報をレポートする。

 

(吉川 絵美)