シリコンバレー通信 Vol. 17 「人気ドラマシリーズ『シリコンバレー』が風刺するシリコンバレーのスタートアップ事情」

シリコンバレー通信 Vol. 17 

「人気ドラマシリーズ『シリコンバレー』が風刺するシリコンバレーのスタートアップ事情」

 

シリコンバレーのスタートアップ事情を描写したドラマシリーズ『シリコンバレー』が話題となっている。米国では2014年から第1シーズンの放映が始まり、今年は第3シーズンに突入した。その間、エミー賞を受賞するなど、作品としても評価されている。日本でも今年の3月からHuluで放映が開始したばかりで、話題になりつつあるようだ。

 

ドラマは起業の聖地シリコンバレーを舞台に、データ圧縮技術を武器にスタートアップを立ち上げた5人の若者たちの奮闘ぶりを、時にコミカルに、時にシリアスに描いている。

 

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(Source: HBO)

 

Hooliという(いかにもGoogleを連想させるような)シリコンバレーの巨大IT企業に勤務する、一見うだつの上がらないテック・オタク的風貌のリチャードが主人公。リチャードはHooliで働く傍ら、インキュベーターを自称するアーリックの家でエンジニア仲間と共同生活を送りながら音楽関連サービスを開発する秘密プロジェクトに勤しんでいた。ある日、Hooliの同僚に何気なくそのシステムを見せたところ、このシステムの基盤となるデータ圧縮技術がとんでもなく革新的であることが露見し、HooliのCEOの耳に伝わる。それによりHooliから1000万ドルの技術買収の話を持ちかけられるが、この技術はもっと大きなインパクトを世界にもたらすと確信したリチャードは、投資家からの20万ドルで5%の株式持ち分というオファーを受け入れ、自分の会社「パイド・パイパー」を立ち上げることを決意した。

 

しかし経営のケの字も分からずにはじめた技術屋リチャード。会社を登記しなければならないという基礎的なことも分からずに投資家からもらった小切手を銀行口座に預金しようとしてしまうほどのドジぶり。その後、Hooliを辞めてビジネス面の支援をしてくれることになったジャレッドも加わり、5人で七転び八起きのスタートアップの茨の道を邁進する・・・というのが、あらすじだ。

 

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(Source: HBO)

 

なぜこのドラマが米国で大人気かというと、まずは、シリコンバレーのテックベンチャーと彼らを取り巻く環境が精密に描かれていること。第3シーズンでは、Twitter社の元CEOであるCostolo氏を監修アドバイザーに迎え入れ、シリコンバレーのインサイダー中のインサイダーの実体験と視点を取り入れているほどだ。そして、一歩引いた客観的な視点からシリコンバレーの内情を風刺しているコメディ性も受けている。

 

例えば、

  • スタートアップのピッチでよく耳にする”Making the world a better place”という理想主義的な言葉が失笑を買っているところ
  • ミレニアル世代の理想主義的な若手エンジニアと、「グレイヘア系」ビジネスエクゼクティブの間のすれ違いと亀裂
  • スタートアップが注目を浴びれば浴びるほど訴訟が舞い込んでくる、アメリカの訴訟社会の様子
  • ベンチャーで大儲けした起業家や投資家の桁違いの散財ぶり、でもその一方で成功しても依然としてSocially awkward(社交下手)なエンジニア・ギークたち

などなど。

 

最近のエピソードでは、近い将来のバブルの崩壊の可能性を示唆するような台詞も見られ、現実社会とリンクして話題を呼んでいる。ドラマのクリエイターもインタビューの中で、「実際に撮影されてから編集を経て放映されるまでに、3〜4ヶ月かかるから、その間にバブルが弾けてましたなんてことにならないことを祈るばかりだよ!」と苦笑している。さてさて今後のドラマの展開が楽しみである。

 

 

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本コラムシリーズでは、サンフランシスコのスタートアップにて事業開発に携わる筆者が、自分の意見を踏まえてシリコンバレーの起業環境・スタートアップ関連の生の情報をレポートする。

 

(吉川 絵美)