アジア・スタートアップ通信 Vol. 3 「中国のシード・アクセラレーター」

 

アジア・スタートアップ通信Vol. 3  「中国のシード・アクセラレーター」

 

米国でブームとなったアクセラレーター設立の動きは世界中に飛び火し、中国でも数々のアクセラレーターが雨後の筍のように立ち上がっている。その中には中国人起業家を対象としたドメスティックなアクセラレーターもあれば、中国市場進出の足掛かりとして参加希望する外国人起業家も対象としたよりインターナショナルなアクセラレーターもある。

 

今回のコラムでは、サンフランシスコ在住のIT起業家で、現在、中国・上海に拠点を置くアクセラレーターである「チャイナ・アクセラレーター(Chinaccelarator)」に参加している David Collierさんの体験談インタビューをお届けする。

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Davidさんは英国出身のエンジニアで、ゲーム会社でCTOを務めるなどキャリアを積んだ後、サンフランシスコでRIKAI Labsというスタートアップを立ち上げ、英語学習者がチャットプラットフォームを通してゲーム感覚で英語を習得できるユニークなチャットアプリを開発している。 中国では有数のアクセラレーターであるChinaccelarator(中国加速)の選考を通過し、今年3月から上海に滞在しながら、現地でプログラムに参加している 。

 

Chinaccelaratorでは、年に2回のバッチ(期)があり、選ばれたチームは6%の株式比率と引き換えに$30,000の資金(転換社債の形)と起業サポートを受けられることになっている 。参加チームは上海に最低3〜6ヶ月滞在し、アクセラレータープログラムに参加し、Demo Dayで発表を行い、投資家と接触をする。その過程で、現地の事業立ち上げに詳しいメンターと定期的に会ってディスカッションをしながら戦略を深めていく。Chinaccelaratorのウェブサイトを見ると、メンター陣は中国人だけでなく、多くの外国人がリストアップされており、非常に国際的なプログラムであることがわかる。と同時に、現地での外国人の起業エコシステムの層の厚さを感じさせる。

 

以下、Davidさんの体験談をインタビュー形式で紹介する。

 

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Q: まずはRIKAI Labsのコンセプトについて教えて下さい。

David: コンテントデリバリーのプラットフォームは約7年おきに変遷をとげており、これまでCD-ROM からウェブへ、ウェブからスマホアプリへ、そして今まさに新たな動きとして(LINE、WhatsApp、WeChatなどの)メッセージングプラットフォームへの流れが出来つつあります。メッセージングプラットフォームは新たなブラウザー的な役割をするようになってきています。そして、今現在、中国で最大のユーザーベースを抱えるWeChat(日本でのLINE的存在のチャットメッセージングプラットフォーム)は世界でも最も進んだメッセージングプラットフォームとなっており、ペイメントシステムもビルトインされていて、アプリケーションがどんどん広がっています。私たちはそこに目をつけ、この最先端のメッセージングプラットフォームをもとに、まずは手始めに、英語学習のコンテンツをデリバリーするアプリケーションを開発しています。Chatbots、人工知能、ゲームなどのメカニズムを取り入れて、新たなユーザーエクスペリエンスを開発しています。

 

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(Source: RIKAI Labs提供)

 

Q: 中国のアクセラレーターに参加しようと思ったきっかけは?

David: 世界最大の英語学習者を抱える中国市場のマーケットの大きさ、そして世界で最も進んだWeChatプラットフォームがあることが中国に目をつけた理由ですが、ここ中国で外国人として事業を展開するにあたり、現地のアクセラレーターに参加することは事業開発のための良い足掛かりになると思ったからです 。特にChinaccelaratorは外国人起業家を積極的に受け入れ、現地で事業をする基盤作りを支援する環境を提供しているため、このアクセラレーターに参加することを決めました。

 

Q: どのぐらいの割合で外国人起業家が参加していますか?どのような国から来ていますか?

David: いま私が参加しているバッチには12のチームが参加していますが、そのうち半分が外国人のチームですね。アメリカの他に、アルゼンチンとかメキシコなど様々です。あとは台湾とか香港から来る人たちですね。皆、中国市場進出の足掛かりとして参加しています。

 

Q: 実際参加してみてどういう印象ですか?良い面と悪い面は?

David: Co-Working Spaceを提供されていて、アメリカの施設などと比べても遜色ない充実した施設環境ですね。スタッフも皆英語が話せる人たちです。来た当初は開発タスクで忙しくてオフィスに缶詰になって作業していましたが、少しずつ現地のコンテントパートナーを模索したり、リーガルの専門家と話をしたりと事業面の方に時間を割くようにしています。中国で外国人が事業をするには色々な規制があって、やはりこういうことは現地の専門家のサポートが必要なので、アクセラレーターのようなサポートインフラは重要ですね。

悪い面としては、中国では規制のためにGoogleとかGitHubなどの欧米系のサービスがほとんどアクセスできないこと!米国にいた時と同じ環境でスムーズに開発できないのはちょっとイライラしますね。

 

Q: どのような内容のスタートアップが多いですか?

David: かなり多様で、ソフトウェア系だけではなくて、ハードウェア系のスタートアップも多いですよ。

 

Q: アクセラレーターというと投資家とのコネクション作りが一つの機能ですが、実際に外国人チームに投資する投資家もいますか?

David: 外国人が中国で事業をする場合、中国国内で信頼のできる中国人パートナーと共同で法人を設立するか、WOFE(外資独資企業)を作るかなど色々と考慮しなければならない複雑な点がありますが、そのようなことをちゃんと理解した投資家とつながることができます。

 

Q: アクセラレータープログラムが終了した後はどうする予定ですか?

David: 中国と米国を行き来しながら事業を展開していく予定です。シリコンバレーの最新のテクノロジーを中国の巨大市場に適用することで、大きな事業機会を掴んでいきたいです。実際、シリコンバレーで学んできたリアルタイムテクノロジーの多くはWeChatプラットフォームに上手く適用できており親和性を感じています。

 

Q: シリコンバレーではいつバブルが弾けるかと話題になっていますが、上海のスタートアップ業界はどんな様子ですか?

David: うーん、まあバブルが弾けるとかそういう話は過去数年にわたり言われてきていることだし、中国が本格的にバブルが弾けたら米国よりももっと大きな影響になるとみんな分かっているけど、起業家はとにかく目の前のことに専念するしかないから、心配していてもしょうがないね。

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Davidさんのインタビューを通して、中国では外国人の起業家やメンター人材のエコシステムも広がりを見せていることが分かった。日本でも今後、起業エコシステムをより一層盛り上げていくには、日本人だけではなく外国人起業家を支援する仕組みを作り、それと同時に外国人の起業サポーター(投資家、メンターなど)の層も厚くしていく必要があると感じた。

 

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本コラムシリーズでは、シリコンバレーを拠点に、現在アジア向けのエネルギー環境技術等の新規事業開発に取り組んでいる筆者が、アジアの起業環境・スタートアップ関連の生の情報をレポートする。

 

(吉川 絵美)