コラム-オーストリアの参戦-

オーストリアの参戦

理事長 
市川隆治

 

 オーストリアの首都、ウィーンのホーフブルク宮殿で2011年以来毎年5月に開催されているベンチャーの祭典が”Pioneers Festival”である。最初は数十人の規模であったものが、今では宮殿の入場上限の2,500人にまで参加者が増えているという。

 

 今年3月には日経新聞との共催で初めて東京において”Pioneers Asia”が開催され、世界各地から千人を超える起業家、投資家等が参加した。このイベントは今後も継続して開催されると聞いている。オーストリア政府からはHarald Mahrer科学・研究・経済担当国務大臣が応援に駆け付けていたが、彼自身も起業家やエンジェル投資家の経験を持っているということで、日本では考えられない環境を羨ましく思えた。同国ではGlobal Incubator Network(GIN)の構築を進めており、その披露も兼ねての来日と伺った。

 

 先にフィンランドの”Slush”を紹介したところであるが、こちらはヘルシンキでのイベントには15,000人以上が参加するという規模であるが、同国の大企業、ノキアからスピンアウトした起業家が中心という感じで、ITやゲームが大勢を占めているとの印象であった。Pioneers Festivalは、ホームページを見てもいたるところに”tech startups”という表現が出てくるように、ITに限らず、ロボッティクスあり、バイオ技術あり、Fintechありと、幅広い分野、しかも日本にも優位性があると思われる分野をもカバーしているとの印象を受けた。

 

 惜しむらくはなぜオーストリアかというところが、今ひとつ腑に落ちないということであった。ヨーロッパのゲートウェイ、ウィーンから数時間であらゆるヨーロッパの都市に飛んで行けると言っても、それはロンドンでもブリュッセルでもヘルシンキでも同じ条件であろう。しかし、東欧とのつながりという点ではオーストリアに地の利があるのではないかと思い当った。地図で見てもウィーンは西ヨーロッパに属するものの、東に突き出た位置にあり、現に東欧諸国とのつながりはどこの国よりも密接ということである。東欧へのビジネス展開を考えるとき、また、未知の東欧の起業家を探そうというときにオーストリアの優位性が出てくるのではないだろうか?

 

 米国に追いつけ、英国やドイツやイスラエルやフィンランドに負けるなというベンチャーの戦いに、またひとつオーストリアが参戦してきている。