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コラム -宇宙への挑戦-

宇宙への挑戦


 理事長 市川隆治

 

JAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)がオープンイノベーションに向けて大きく舵を切った。JST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)のイノベーションハブ構築支援事業を受けて、国立研究開発法人を核としたイノベーションハブとならんとするということである。

 

これまではJAXAが仕様を決めて業者に発注し、納品させるという一方通行であったが、今年7月の「第1回オープンイノベーションフォーラム」や9月に開催された「課題設定ワークショッププログラム」に出席してみると、そのやり方がガラッと変わっていた。JAXA自身も企業に出向いて意見交換し、企業側からの提案を促していると言っていたが、さらに、ワークショップという形でオープンな場で新たなやり方を説明し、それに応えられる企業(大企業に限らず、世界をリードする中小企業やベンチャー企業)の参加を募っていた。

 

その背景には、宇宙開発が、これまでの無重力環境から、JAXAが不得意とする月や火星といった重力天体上での活動に変わり、地上での技術の応用可能性が出てきたこと。そして米国やロシア、欧州といった宇宙開発先進国が巨額の予算を投入して先陣争いを演じている中で、日本としては地上のモノづくり技術の優位性を活かして、幅広く企業に参加してもらい、日本の英知を結集した宇宙開発を前進させたい(日本は個々では世界をリードしていてもバラバラ)(ゼロベースで宇宙技術を開発するより、地上で実現されている技術をベースとして宇宙技術に昇華させた方が効率がいい)ということがあるようだ。

 

とはいえ、課題は宇宙という過酷な環境下での探査であり、そう簡単なものではない。次の3分野の説明が主としてその分野の先頭を走る大学教授から現状の研究成果が発表された。

 

(1) 広域未踏峰探査技術

一点豪華主義(NASAの火星探査車キュリオシティは約900kg)の探査からミミズ、アメンボやフナムシといった高い踏破性を持った昆虫型ロボットを多数活用することによる群知能を活用した分散・協調型探査

 

(2) 自動・自律型探査技術

遠距離のため通信にも時間がかかる環境において、地球からの指令ではなく、自律的に活動する拠点建設技術(補給は細く、情報は太く)

 

(3) 月や火星の資源利用技術

すべてを地球から持ち込む体制から月や火星の表面物質等の資源(月の表土、レゴリスは金属酸化物で4割は酸素)を利用する技術

 

企業の研究者の参加を促すため、クロスアポイント制度による出向、知財の持ち分の特例、場合によってはJAXAやJSTからのファンディングの可能性等が用意されているということである。また、月や火星の表面を模擬した大規模な屋内フィールド(宇宙探査フィールド(仮称))も整備し、新技術の実験に資するということである。

 

当日、会場からもこれまで宇宙とは係わりがなかったが、宇宙で応用可能な優れた地上技術を持った中小企業の参加を促すための方策が望まれるとの声があったところであるが、我と思わんベンチャーは今後のワークショップ(随時)やオープンイノベーションフォーラム(年3回程度)に参加してみてはどうだろうか?

 

(注:一般に分かりやすくするため、テクニカルタームや文章表現の一部は筆者が独自に変更した。)