コラム -ドイツの復権―

ドイツの復権


 理事長 市川隆治

 

企業の枠を超えて生産工程をデジタル化・ネットワーク化し(スマートファクトリー)、生産コストを極小化するという ”Industrie 4.0”(第4の産業革命)の産官学による推進により、ドイツ製造業は復権している。日本においても、建設機械メーカーが世界中の自社製品の情報を管理し、稼働率の向上や維持費の低減に役立てているという事例はあるが、企業の枠を超えてというところがIndustrie 4.0の醍醐味である。

 

そしてそれを裏で支えているのが教育・訓練制度である。ドイツ語でDuale Systemと呼ばれるが、日本語では学校・企業二系統職業教育訓練併進制度といい、簡単に言うと高校レベルで、1週間のうち学校で1~2日間座学を受け、残り3~4日は受け入れ企業で職業訓練を受けるという制度である。この仕組みにより、生徒はふつうの高校生に比べ、仕事に対するモチベーションが格段に上がるというメリットがあるということである。日本でも大田区にある都立工業高校がこのドイツのデュアルシステムを参考にして「東京版デュアルシステム」として10年来試行錯誤を続けてきている。実際に運営してみると日本では前例のない試みで、先生方の負担も相当なものになるという苦労話もうかがった。また、これを全国展開しようとしても地方では学校と受け入れ企業がどうしても遠くなってしまうという難点があるということであった。ドイツではさらに大学レベルでもDuales Studiumが進められているということである。

 

さて、ドイツにおけるベンチャーはというと、ミュンヘンのフラウンホーファー研究機構の事業化支援組織、Fraunhofer Ventureがつとに有名で、経営経験のない研究者と、外部の経営人材とのマッチング支援を行い、スピンオフを円滑化させていると聞いている。

 

ある国際カンファレンスでドイツ人研究者とそのような話をしていたら、Steinbeis Foundationもベンチャー支援に積極的に活躍していると聞いた。同財団のホームページによれば、Steinbeisの本部はシュトゥットガルトにあり、30年以上の歴史を有し、世界で最も成功した技術移転組織ということである。約千社の国際的ネットワークを有し、6千人の専門家で支えられている。提供するサービスは課題解決型であり、顧客の直面する様々な課題について、最新の技術やノウハウへの迅速なアクセスを提供するという。

 

ドイツにおいてはベンチャー向け株式市場であるNeuer MarktはITバブルの崩壊とともに2002年に閉鎖され、現状ではベンチャーの株式公開は容易ではなく、EXITは大企業による買収が中心と言われている。VCの活動も低調と言われ、米国のシリコンバレーをモデルとするベンチャーエコシステムは必ずしも整備されているとは言いがたいが、ここに来て ”Industrie 4.0” が脚光を浴び、今後モノづくりやバイオ分野におけるドイツ方式でのベンチャーの発展が期待される。