シリコンバレー通信 Vol. 5 「シリコンバレーのインキュベーション施設」

シリコンバレー通信Vol. 5   シリコンバレーのインキュベーション施設

 

サンフランシスコからシリコンバレーにかけて、この数年間でいくつものインキュベーション施設が立ち上がっている。その中には、アクセラレーターの機能も含めて、スタートアップのエコシステムを作ることを目指した総合的なインキュベーションスペースもあれば、簡易型共有オフィススペース(いわゆるコワーキングスペース)もあり、多種多様である。

 

今回はRedwood Cityに施設を構えるNestGSVというインキュベーションセンターを紹介する。NestGSVは72,000ft2のフロアスペースを有するシリコンバレー屈指のインキュベーション施設である。 サンフランシスコとサンノゼのちょうど中間ぐらいに位置し、Highway 101沿いにあるStanford Medical Schoolの建物のすぐ裏という、絶好のロケーションだ。NestGSVのGSVは資金サポーターの一社であるGSV Capital(投資信託ファンド運営)の名前から来ているという。

 

NestGSVの入り口

 

オフィススペースはいくつかのプランに分かれている。オープンスペースに机を向かい合わせたコワーキングスペースでは、ひとつのデスクあたり$650/月の契約となっている。スタートアップの創業初期で社員が2〜3人の会社にはもってこいだ。プライバシーを気にする会社の場合はプライベートオフィスを$3000で借りることもできる。会社がもう少し大きくなって数人〜10人ぐらいになると、簡易壁で仕切られた大きめのスペースを割り当ててもらうことができ、月々の賃料は$6750となる。

 

コワーキングスペースの様子

 

施設はその他にもピッチコンテストが行われるオープンスペースや、セミナールーム、共有会議室、カフェテリア、ソファやゲーム器具がおかれたブレイクルーム、オープンコートヤード、スポーツジム(隣のビル)やテニスコートなどがあり、スタートアップで働く環境としては文句無しである。
施設の充実度ももちろん大切だが、シリコンバレーが起業に適している大きな理由のひとつはこの天気の良さ。一歩建物の外に踏み出せば、いつでも雲ひとつない青い空が出迎えてくれる。この空を見ていると、限界なんて無いんじゃないか、という気分にさせてくれるから不思議である。起業家のクリエイティブで楽観的な思考はこんな環境だからこそ醸成されるのだろう。

 

オープンコートヤードの様子

 

NestGSVは2012年にオープンしてから既に2年が経つが、ここになって新しいストラテジーを打ち出している。以前はテクノロジースタートアップならどのような会社でも対象としていたというが、新しいストラテジーでは以下の4つのエリアにフォーカスするという。
①Sustainability(環境保護などの持続可能性に焦点を当てたビジネス)
②Mobility(モバイル関連のビジネス)
③Big Data(ビッグデータ関連のビジネス)
④Ed Tech(教育×IT関連のビジネス)

 

以前はフォーカスが無かった為にスモールビジネス的な会社も場所を使う為だけにスペースを借りていたことがあったという。今後、より成長が期待されている分野にフォーカスして、その分野のスタートアップのハブとなることで、強固なエコシステムを作り出すことを狙いとしている。

 

アメリカ国外の組織と連携して、インターナショナルなエコシステムの形成にもつとめている。日本のJETROのシリコンバレー・イノベーション・プログラムで選出された会社は、数ヶ月の米国滞在期間はここNestGSVを拠点としてシリコンバレーのエコシステムにどっぷりと漬かる仕組みになっているという。

 

NestGSVには各国からやってきた起業家の出身国の国旗がずらりと掲げられている。外国の起業家がシリコンバレーにやってきて拠点を作る時のローンチパッドとなるべく最高の環境を提供してくれている。

 

ここ数年で雨後の筍のように、米国のあちらこちらでインキュベーション施設が立ち上がっているが、ここ起業の聖地であるシリコンバレーでのインキュベーション業界の競争もますます熾烈になってきていると肌で感じる。各インキュベーション組織自らがスタートアップとして、ターゲットを定め、差別化されたストラテジーをもっていないと勝ち残れない世界となりつつある。

 

**********

本コラムシリーズでは、サンフランシスコのスタートアップにて事業開発に携わる筆者が、自分の意見を踏まえてシリコンバレーの起業環境・スタートアップ関連の生の情報をレポートする。

 

(吉川 絵美)