シリコンバレー通信 Vol. 3 「スタートアップ・アクセラレーター最前線 ②」

 

シリコンバレー通信Vol. 3   スタートアップ・アクセラレーター最前線 ②

 

今回のコラムでは、前回紹介した、Cleantech Openというクリーンテック分野に特化したアクセラレータープログラムの特訓セミナーについて詳しく紹介する。

 

2014年度のアクセラレータープログラムの開幕として、3日間の特訓セミナーが米国の東海岸と西海岸の両方で開催された。筆者は参加スタートアップとして西海岸の特訓セミナーに参加した。

 

西海岸の特訓セミナーは6月末にサンフランシスコ郊外のハイアットで行われた。3日間で40ものセッションが詰め込まれた、まさに短期集中型の特訓セミナーである。 アクセラレーターの選考に通ったスタートアップのうち米国西部に所在するスタートアップ数十社が集結し、会場は熱気がムンムンとしていた。

 

セミナーの内容としては大きく分けて以下のカテゴリーに分かれる。それぞれのカテゴリーが更にいくつかの細かいセッションに分かれて、その分野では一流の講師が講義を行う。さながらミニMBAという感じである。

1. Business Model Canvas

2. Product/Market Fit (Customer Discovery)

3. Market(s) and Getting to them

4. Product/Technology Validation

5. Finances and Funding

6. Legal

7. Management Team

8. Sustainability

9. Executive Summary

10. Investor Presentation

 

セミナーの根幹は、とにもかくにも 「ビジネスモデルキャンバス」であり、これを中心に話が進んでいく。ビジネスモデルキャンバスのコンセプトは、ビジネスモデルを構築する上でのツールとしてAlexander Osterwalder氏によって数年前に開発されたものであるが、あっという間にシリコンバレーを中心に世界中の起業教育者の間で最良のツールとして支持を集め、起業家の間でも実践的に使われ始めているものである。(補足:ビジネスモデルキャンパスについてはOsterwalder氏の著書『ビジネスモデルジェネレーション』に詳しい)

 

ビジネスモデルキャンバスでは、ビジネスモデルを考える上で重要な9項目について「仮説」をたて、実地の市場調査によって「検証」することを基本としている。

 

<ビジネスモデルキャンバスのテンプレート>

 

今回のセミナーの基調講演を行った、リーンスタートアップ提唱者として著名なSteve Blank氏も「ビジネスモデルキャンバス」の熱心な支持者である。彼の言葉で印象に残ったのは、「今、君たちが考えているビジネスモデルの前提条件は全て『仮説(hypothesis)』に過ぎない。そのほとんどが思い込みに過ぎないかもしれない。重要なのは、現時点ではまだ単に仮説に過ぎないということを認識して、潜在顧客やパートナー候補へのインタビューを通して1つずつ『検証(validation)』していくことだ」ということである。

 

“Get out of the building!” (机上でウンウン考えてるだけではなくて、とにかくオフィスを出て、潜在顧客やパートナーに会って話を聞くんだ!)

 

という言葉はセミナー中に何度耳にしたかは分からない。特に技術系の起業家が多いクリーンテック分野のベンチャーでは、技術だけにフォーカスしてしまい、それが本当に市場で必要とされているものなのかが曖昧なまま開発を行っているケースが後を絶たない。その意識改革として、「まずはものを作る前にとにかくオフィスを出て、人と話すのだ」ということを何度も繰り返して参加者に聞かせていた。

 

今回の特訓セミナーでは、他にも、エレベーターピッチ(30秒程度で簡潔に自社あるいは自分を売り込むこと)の練習や、資金調達、技術IP戦略、チームビルディングなど、様々なトピックがカバーされた。

 

セミナー参加者の多くは、40代〜50代のビジネス経験豊富な起業家であるため、セミナーは全体的にも「大人仕様」という印象であったが、とにかく皆、貪欲に学ぶ姿勢を見せていたことがとても印象的だった。高齢の経験豊富な人でも、「自分は経験があるから」という変なプライドは無く、純粋に「これをもっと良くしたい」「もっと学びたい」という思いをもって挑んでいるのが伺えた。そのような向上心の高い起業仲間と出会えたことは、私にとっても、今回のセミナーにおける1つの収穫であった。

 

3日間の特訓セミナーを終えた後は、毎週1回、各トピックに焦点を合わせたウェビナー(Webinar:ウェブ上で開催するカンファレンス)が開催され、それとともに宿題が課される。また、特定の分野についてエキスパートに詳しく相談したいチームのための「ビジネスクリニック」も開催している。さらに、各チームは専任でアサインされたメンターとアポイントメントをとって、一緒にビジネスモデルキャンバスやビジネスモデルをレビューして、様々なフィードバックを受けることが期待されている。 これらのプログラムについては次回以降に詳しく紹介したい。

 

 

リーンスタートアップのコンセプトについて力説するSteve Blank氏

 

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本コラムシリーズでは、サンフランシスコのスタートアップにて事業開発に携わる筆者が、自分の意見を踏まえてシリコンバレーの起業環境・スタートアップ関連の生の情報をレポートする。

 

(吉川 絵美)