第165回「無から有を生み出すBizモデル㊴‐農業の新たな資金調達法ABLの導入と生産管理」

 アベノミクスでは、農業などの6次産業化とともにベンチャー企業の育成を謳っているが、これ農業などに特化したアグリ・ベンチャーへの期待といっていい。またとないビジネス・チャンスが現れようとしている。

 

 農業人口の減少とそれに伴う農地面積の減少と耕作放棄地の増大、そして農業者の高齢化。1960年には1454万人いた農業者も2007年にはわずか5分の1の299万人、このうち60%が65歳以上の高齢者となった。ただここで注目したいのは農業出荷額である。さぞかし減少していると思われがちだが、それが大間違い。1960年の1億9100万円が、2007年には8億1900万円と4倍以上に増えているのである。

 

 担い手は減少しているのに出荷は増える―ここにこれからの農業の発展を示唆するポイントが秘められているのだが、この問題はあとで改めて取り上げる。農業者が農地を所有ししばりつけようとする現行の農地法には思い切った方針転換をすれば、新しいベンチャーや若者に魅力あるものに映ると考えられている。

 

 それは「所有から利用へ」の抜本的なパラダイム・チェンジであり、細切れの農地を面的に一括して借り受け、担い手に配分する公的機関や農業法人の必要性である。地主はこれまでの農地の所有者から出資者へと衣替えとなる。そのためには貸し出される農地情報が一目でわかる全国的なネットワークが求められるとともに農地に関する貸借上の法律関係を明確にしておく必要がある。

 

 このような要請は別の面からも強く求められている。それは農地の担保性の問題である。アベノミクスでも農地の価値に対し最大20倍までの融資が可能になるとの方針を打ち出しているが、その実態には貸借に関する農地法の規制緩和は欠かせない。

 

 農地は転用や売買に多くの制約があり、担保性に特殊な面をもっている。そこで融資活性化の一環として「動産・債権担保融資」(アセット・ベースト・レンディング、略称:ABL)などが考えられている。おり、農水省のホームページではABLについて、借り手の事業活動そのものに着目し、牛、豚、野菜、海産物など農業産物などの動産やそれに対する売掛金を担保に資金を貸し出す仕組みと説明されている。農業者にとっては農地を離れた資金調達法として注目されるが、問題は動産などの評価法の確立。これら商品に対して、それぞれの識別、追跡が可能なトレーサビリティが必須といわれており、そのためには総合的な生産管理システムの確立が不可欠となる。

 

 これまでどんぶり勘定だった農業は否が応でもITとのドッキングをせざるを得ない状況が姿を見せてきている。

 

(多摩大学名誉教授 那野比古)