第161回「ベンチャー企業支援関連3団体が緊急提案まとめる」

 わが国のベンチャー企業支援育成を目的とする団体の公益社団法人日本ニュービジネス協議会連合会(略称・JNB)、一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)、日本ベンチャー学会(JASVE)はこのほど21世紀型の新たな成長戦略に向けての緊急提言をまとめ公表した。題して「高付加価値型ベンチャー企業の簇業」。3団体によると、ここでいう簇業(そうぎょう)とは、湧きいずるように草木が群生する創業のことをいう。

 

 展開は以下の5点に主眼がおかれている。①プラットフォーム企業の推進と高付加価値型ベンチャー企業の簇業、②成長・活力ファイナンス導入のための規制改革と公的関与の拡大、③国家ブランドの確立と知的財産庁へ組織替え、④大学改革と挑戦するリーダー人材の育成、そして⑤高付加価値型中小・ベンチャー企業の簇業による自律した地域づくり。ここで目新しい言葉、プラットフォーム企業・団体とは、バリューチェーン・リーダー又は集積リーダーとして、コア事業を中心に、オープンイノベーション経営を実施し、地域の中小・ベンチャー企業の簇業に貢献できる企業などをいうとしている。

 

 本欄では早い時期から、マイクロファイナンスからクラウド・ファウンディングに至る新しい資金の動きについてしばしば取り上げてきたが、緊急提言では地域密着型の動きとして注目されている。本提言では、証券市場、特にグリーンシート市場の充実を取り上げ、地域密着型中小・ベンチャー企業に、地域住民が自由に投資し、売却できる機会を創出するよう求めている。

 

 少額資金をクラウド上で集めるクラウド・ファウンディング、地域住民のファンに組織されているサッカー・野球・バスケットボール・思い出を絵にして喜ばれる介護施設の支援ビジネスなどソーシャルビジネスなど、高齢化社会固有なビジネスや、資金の集め方が、現状の制度の中で根付き始めている。しかし、専門エンジェルとして投資するには業界の目利き力がない小口支援者が、支援したい会社に出資する道は、専門GP(無限責任社員)によるエンジェル・ファンドの組成によることが可能である。

 

 高齢社会の構成員が、後進や地域のため容易に資金を提供し、また回収する場として、非上場企業の株式などを売買できるように、日本証券業協会が行っているグリーシート市場を日本版JOBS法を適用し、地域の活性化に貢献することを提案している。

 

 給与所得はないが、退職した富裕層のストック資金を流動化するために、限度額上限を1億円に引き上げ、同時に相続価値の評価を相続時時価の2分の一とする。エンジェル投資上限1,000万円の現行制度は、年間所得が3,000万円以上あり、源泉税を多額に支払っている個人にとってはメリットがあるが日本の1,000兆円超の金融資産をもつ者は、60歳以上の年齢層である。すでに、給与所得者ではなくなった者は、エンジェル投資金額が、寄付金扱いで所得と相殺され、源泉税が還付されるというメリットを享受できない。彼ら富裕層の意思による自己財産を日本経済の将来に活用する道を拓くには、相続税上の恩典(投資金額の時価評価2分の一課税)と共に、上限金額(1,000万円を1億円に)引き上げることが重要である。゙タンス預金゙の活性化に向けたひとつの方策でもある。

 

 一般の国民や既存企業が参加し、フローとしての所得はないが、ストック(金融資産)のある誰でも参加できる使い勝手の良い制度に見直し、中小・ベンチャー企業の育成に目覚めさせようという具体的提言である。

 

(多摩大学名誉教授 那野比古)