第155回「無から有を生み出すBizモデル㉚‐三陸沿岸で根付く150万円上限の日本版マイクロファイナンス」

 本欄でも新たな資金集めの場としてマイクロファイナンスをしばしば取り上げてきた。ノーベル賞にも輝いたバングラディッシュのグラミン銀行はその発祥の地だが、内職用のミシンの代金を借りるといった発展途上国ならいざ知らず、高度に成長した我が国などではそのようなファイナンス形式は定着しないとみられていた。

 

 ところがである。2011年3月に発生した東日本大地震は奇しくもマイクロファイナンスを三陸沿岸に根付かせるきっかけを作った。同年11月にスタートした「三陸復興トモダチ基金」である。

 被災地緊急支援とマイクロファイナンスが目的で、助成金を交付する。

 その柱は3本。①従業員20人以下の被災中小企業の再雇用支援、②新規復興事業立ち上げの支援、③利子補給で支払い負担を低めた流出設備回復など復興資金の供給。基金の設立に参画したのは、国際的な米NGOのメーシーコープ、NPOのプラネットファイナンスジャパン、それに三陸沿岸を営業地域にもつ気仙沼信用金庫だ。

 

 メーシーコープはかつてアチェ地震やハイチ地震の際にも現地に入り、被災中小企業の活性化と雇用に力を尽くした実績をもつ。オレゴン州ポートランドに本社があるメーシーコープは、今回は米国で集めた支援金200万ドルが当初の資金となった。運用はニーズの把握が的確な気仙沼信用金庫が当たるが、助成の具体的内容は、再生・新規創業においては初期費用の50%以内で限度総額150万円。

 地域ニーズを満たす事業が選定されたといい、例えば気仙沼特産ふかひれコロッケを販売していた企業は、資金上再開を断念したが、替わって桑葉による健康に注目した気仙沼くわ茶を開発し、助成金を獲得している。

 

 災害紛争、貧困に直面した人に生活が送れる環境を提供したのは世界40か国以上で、1900万人以上に達するという。再雇用で1中小企業最大で2人、1人あたり毎月10万円を1年間支援するという。また新規事業には初期費用の50%以内で上限150万円。利子補給は最長2年で、1部を基金が負担する。

 

 一方プラネットファイナンスジャパンは、わが国でマイクロファイナンスの普及、促進を推進しているNPO法人。世界60か国でマイクロファイナンスを支援しているグループの日本法人で本部はパリ。同基金にはこれまで新たに米半導体大手のエヌビディア社から200万ドル、ファーストリテイリング社から6千万円、米ボーイング社から25万ドルなど多くの寄付がよせられているという。

 

(多摩大学名誉教授 那野比古)