第151回「無から有を生み出すBizモデル㉖‐凋落ガソリンスタンドからみる次世代自動車、電気か水素か」

 毎年5月は待望の連休たけなわ。道路は車でひしめきあい大渋滞を呈するのが普通だ。ところが、日常の周辺を眺めて頂きたい。気が付くのは、ガソリンスタンドの相次ぐ閉店である。日本の車は合わせて9千万代も存在し、その数はほとんど変わっていないというのに、エネルギー供給源たるガソリンスタンドがここにきて激減しているのである。

 

 直接の原因は、スタンド地下にあるガソリン貯蔵タンク修理の義務付け。老朽化で安全性に問題が生じて危険性が指摘されているが、スタンドの経営者には修理、取替えを行うための費用を支出する力がない。結局閉店の道をたどるしか方法がなくなる。間接的な原因もある。それは、車が昔ほどガソリンをガブ飲みしなくなったことだ。省エネを背にした燃費向上競争は、車の維持費での戦いに拍車をかける。

 

 20世紀ではレーシング・カーか超高級車にしか搭載されていなかったターボ・チャージャー(過給器)が、今では小さな軽自動車にまで普及している。排気ガスの圧力でターボ・ファンを回し、空気を圧縮してシリンダーに供給、これによって燃費は飛躍的に向上する。エンジン自体のガソリン消費低下もあり、燃費は平均年率2%の割合で向上しており、それだけガソリンの消費量は少なくなっている。商売が成り立たなくなるのは当然の理で、近く30km圏内でのガソリンスタンドの位置を把握しておかないと走行できないのではないかといわれている。

 

 一方このような“地域ガス欠”地帯の出現は、新しい産業の誕生を促している。その究極にあるのが電気自動車であり、燃料電池車である。電気自動車は充電電力で走る車だが、これには前述のガソリンスタンドに加え、幾多の問題がある。ガソリンスタンドも営業である以上利益を得なければならないが、電気の販売がそれほどの儲けを生み出せるのだろうか。充電だけなら、ガソリンスタンドでなくてもコンビニ他様々な施設で備え得る。それに電気では、満タンにするのに急速でも20分はかかるというのも問題であり、しかも航続距離はわずか100kmあまり。これでは果たして車の王者としての地位が得られるかは難しい。

 

 電力分散源としての電気自動車、例えば家庭や地域全体として電気代高騰時に電気自動車の電力を使うというアイデアを声を大にして叫ぶグループもいるが、これは次の燃料電池自動車でも解決できる。燃料電池車はガソリンと同様、燃料の水素を供給する必要があり、航続距離はガソリン車並かそれ以上。しかも排出するのは水だけ。圧縮水素を売るスタンドは、その販売によってガソリン同様に儲けを出すことができる。燃料電池車は、かつては1台数億円といわれていたが、今では触媒の改良などによって数百万円台となり、普及が視野に入った。この話を皆さんはどう読んでいただけるだろうか。なお、電気自動車については、インホイール・モーター式の航続距離の長い車もある。インホイールとは、4つの車輪それぞれがモーターを内蔵しているもので、電気自動車としては将来本命となる可能性がある。いずれにしても、ガソリンスタンド、修理工場などは抜本的な改革を要求されている。

 

(多摩大学名誉教授 那野比古)