第145回「無から有を生み出すBizモデル⑳‐平成のモラトリアム始末記(中)-資本性劣後ローンが浮上」

 中小企業金融円滑法、いわゆる平成のモラトリアムは、文字が示すように補助金などを投入するのではなく元本の返済期限の延長を図るというもので、企業再生の方針を示すリスケがベースとなっており、期間中に中小企業10社に1社が利用したともいう。前回「1:3:1」の話をしたが、問題はリスケ通りに再生ができず倒産予備軍のレッテルが依然とれない最後の1分の約6万社。同法が期限切れとなったとあり、貸はがしや貸しぶりが横行すればたちまちダウンしてしまう。それどころか、やっと再建途上に乗った真ん中の3分、18万社にも悪影響が及ぶ恐れがある。

 

 政府は2月末、金融機関に対し、中小企業へのポスト・モラトリアム支援を第3の糧にしたいと要請している。中小企業基盤整備機構に対しては、出資や債権買い取りのためのファンドの設立を促しているし、金融庁は、貸し付け条件の緩和を設けるよう金融機関に促すとともに動産担保として貸し出しを行う動産担保融資(ABL)の活用を提案している。融資を切り離して劣後ローンや資本性借入金に組み替えたり、売掛債権を担保とした融資などはバランスシートを大きくし改善する可能性も秘める。

 

 DES(デッド・エクイティ・スワップ)とは企業の負債を資本金に組み入れて負債を消し、悪化したバランス・シートを一挙に改善、延命する方策として裏街道などで珍重されてきたが、これとは別に、貸金を出資に固定せず融資ができるという新しい形は注目に値する。

 

 劣後ローンに関しては、日本政策金融公庫が従業員9人以下の中小企業や個人の創業・開業資金として、貸し出し金を相手企業の自己資本とみなすことができる資本性劣後ローンによる貸し付けを開始した。名称は挑戦支援資本強化特例制度。限度額は2000万円で期間は7~10年。利率は業績に連動してリスクに応じて3種類ある。特徴は収益がでにくい創業当初は利率を大幅に軽減することで、低利で長期資金を獲得できるように考えられており、ベンチャー企業や第2創業には有利な仕組み。しかも利息の支払いは、事業がうまくいき始めてから支払えばよい。配当金ではなく利息としての支払いなので損金に算入できるメリットがある。成功報酬ともいえる利率は、成功達成8.55%。普通4.75%、不良0.90%。

 

 一方で内閣府は、これまで大型の再生が対象だった官民ファンドの企業再生支援措置を「地域経済活性化支援機構」に衣替えして、中小企業の支援を重点化する方向も打ち出されている。中小企業を対象とする再生ファンドへの出資を促す。

 

 今回のモラトリアムで、中小企業側にもリスケ更新時に返済額を増やすなどの努力が必要なことも明らかになった。債権者持分で不良債権とされ破たん懸念先に指定されて新規融資ストップの苦渋の中から、リスケで正常先に変更され借り替えができた効果は極めて大きい。申し込みの35%が新規融資にも応じられたといわれている。

 

(多摩大学名誉教授 那野比古)