第130回「CSV」無から有を生み出すBizモデル⑧‐絶滅鳥「ドードー」に学ぶ生物多様性の価値」

 1961年、インド洋に浮かぶ孤島、モーリシャス島でのことである。この鳥はドードーと鳴いたらしいのだ。「ドードー」!飛べぬ可愛らしいこのくちばしの大きな鳥を指して、ある英国人がこう呼んだのが最後であった。いまはもう絶滅していない。

 ダチョウを小さくしたようなハトのようなこの鳥ドードーは、1507年に島がポルトガル人によって発見されて以来、食糧としての乱獲や島に持ち込まれた犬、ネズミなどの捕食によって食べ尽くされ、1961年を最後にドードーはその姿を消した。そして年が下がって1977年、科学界の重鎮である『サイエンス』誌197号に不思議な論文が発表された。

 投稿者は米生態学者のスタンレー・A・テンプル。テンプルによると、モーリシャス島の高地には、固有種の樹木、カリバリア(タンバラコクとも呼ばれる)というアカテツ科の植物が生えている。ところが1970年代にテンプルらが現地を調べたところ、この樹木はわずか十数本しかなく、しかもそれぞれで数十年の古木となっており、カリバリアの絶滅も時間の問題とされた。

 ところで、ここでテンプルによって問題とされたのは、カリバリアと、すでに絶滅しているドードーとの関係であった。というのは、カリバリアは多くの実をつけることが出来るが、それが地上に落ちても決して自生出来ないという点である。

 カリバリアの種子は堅く厚い外皮の殻を持っており、この厚い殻に切れ込みが入らないと、内部の種子の出芽は出来ない。ところがドードーの胃には砂袋などもあり、切れ込みを入れることが出来たというのである。

 テンプルによると、カリバリアとドードーは共生関係にあり、カリバリアの種子はドードーによって生気が与えられ、そして成長したカリバリアはドードーの餌になる。

 ところが今、そのチェーンが切れ、ドードーが居なくなったため、カリバリアは独り残され、絶滅に追い込まれようとしているというのだ。そこでドードーに代わる様々な外来動物が試され、ついに七面鳥が発見された。

 七面鳥はカリバリアの種子に切り込みを入れることが出来たのである。おかげで新たなカリバリアの芽が吹いた。

 この話は実はCSV(クリエイティング・シェアド・バリュー)に深い関連を持つことから取り上げた。

 今後のCSVの根幹には、多様な生物種を保存し、存続再生を可能とし、さらにそこから得られる利益を人類で共有しようという考え方がある。「生物多様性」(バイオダイバシティ)の問題と呼ばれる。

 CSVでは最終目的には、このバイオダイバシティの持続と、それから生み出される利益、この2つの価値を存続させることにある。

 ここで利益としてひと口に言ってしまったが、地上の微生物など生物から人類が得ている利益は極めて多く、今後益々増大すると考えられているからである。

 1992年リオデジャネイロで開催された「地球サミット」では、バイオダイバシティに関する国際会議がもたれ、その結果は「CBD」(生物学的多様性に関する条約)として採択された。

 わが国では国内法として2008年「生物多様性基本法」として施行されている。

(多摩大学名誉教授 那野比古)