第103回「フェイスブック株の低迷は想定内とするその理由④」

 鳴物入りでIPOを果たしたフェイスブック株式のその後の低迷ぶりに関して、これを意外ととる向きと、想定内ととる向きがある。

 意外派は初値から50%アップは確実とみる2000年前後のIPO株の狂乱の動きが忘れられないひと握りの人達で、想定内派は、フェイスブックの事業基礎そのものに内在する危険性を懸念する人達であった。

 フェイスブックではユーザーは実名登録が原則で、性別、年齢、住所ばかりでなく、職歴、趣味趣向、国籍まで明らかにしなければならない。したがってそれまでのいわば偽名登録もOKだったネットワークを基とするデータベースと異なり、フェイスブック・ユーザーのデータベースから導き出される様々な加工データには真実性が高く、効果的な宣伝・広告が打てるという特徴があった。また限られた小さな特定の層を対象とする商品・サービスのアプローチも可能とした。

 チュニジアやエジプト・リビアなどで政権を炎上させる事象すら発生したのも、書き込みをする人達は実名で内容は真実であるという信頼性がベースにあった。

 中国の「5毛党」のように共産党を支援する書き込みをする毎に1件につき0.5元の謝礼が支払われるなんていったものとは次元が異なる。

 フェイスブックの宣伝に対する高効果は政権炎上にまで至るが、一方、より効果的な宣伝という点ではグーグルがまったく新しい方法を打ち出し話題を呼んでいる。同社が提供している60以上のサービスに登録されたユーザーのプライバシー情報を一元管理するというもので、これにはプライバシーの中のプライバシーともいわれる端末の位置情報、購買・支払情報、検索情報、Gメール情報などが含まれる。フェイスブックと比べて、更に詳細なカテゴリー分析が可能で、ピンポイントの宣伝・広告が打てると考えられている。

 ところでこのグーグルの方針に対しては、EU(ヨーロッパ連合)から反対ののろしが上げられている。プライバシー侵害がその理由だ。プライバシー関連情報の収集に関しては、欧米でそれぞれ異なった見解がある点は理解しておく必要がある。

 ヨーロッパではプライバシー関連情報の収集に際して、事前に被収集者の同意を必要とする「オプトイン」の立場を採っているのに対して、米国はIT産業振興のためには、そのような事前の足かせを課すより、被収集者が求めることによって、はじめて情報収集を停止あるいは訂正するという「オプトアウト」方式が採られている。

 グーグルの今回の方針打ち出しは、「オプトアウト」をベースとしたものである。

 ところで、このような大きなデータベースを基礎とした「ビック・データ・ビジネス」を始める場合、最近までは巨額を投資して自前でデータ・センターを設立することが必要であった。だが、いまはその手間は全く不要。アマゾンなどがもつ巨大なデータ・センターの余力を商品として貸し出しており、それがいわゆる「クラウド・コンピューティング」市場を形成している。

 ニューカマーは、自らデータ・センターを作らなくとも、クラウドを利用すれば直ちに新しいサービスの展開に乗り出すことができる。

(多摩大学名誉教授 那野比古)