第101回「CEO独裁への危惧がフェイスブックの株価の足引っ張るとの見方も②」

 フェイスブックの今回のIPOについては、フェイスブック社自体の企業ガバナンスに関する懸念が株価の足を引っ張ったという見方もある。株式上場ではあまり見られない例である。

 これは、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏個人が、種類株など様々な方策を駆使して議決数の50%以上を確保している点である。まさに独裁権の掌握だが、このような決定権の集中、いわば暴走の素地が公開企業に許されていいものかといった疑問である。株主の監視の目は全く無視できるわけで、企業が健全な発展を遂げる上で最重要とされる統治(ガバナンス)上極めて重要な欠陥を内在しているというのである。

 フェイスブックを取り巻く環境は、発展に向けて順風満帆とは言い難い。

 第1の問題点は、携帯(モバイル)端末、スマホに向けての取り組みである。2011年には広告によって39億ドルを売り上げているが、その大部分はパソコン向けで、今後モバイルという新しい媒体に適応できるかどうかが危惧されている。

 IPO2日前にフェイスブック社から開示された資料によると、全世界約9億人のユーザーのうち、すでにその2分の1はモバイルからのアクセスとされている。2011年度売上げの80%超はパソコン向けの広告収入であり、2012年3月開始したモバイル(スマホ)向けのサービスは、モバイルでは広告を載せるスペースが小さく限られているとあって、今後の展開が疑問視されている。

 今年4月、同社はモバイル向けSNSで急成長していた米インスタグラム社を約10億ドルという高価で傘下に収めた。この買収については、フェイスブック自体の今後モバイルへの進出を迅速に果たすための技術、ノウハウを入手するという目的がある一方、モバイルSNSという新しい分野に進出するに当たり、あらかじめライバルの芽をつんでおくという意図もあったといわれる。

 しかし、モバイルSNSに関しては、米ピンクレスト社など様々なベンチャー企業が始動しているなか、あの大手グーグルが、「グーグル+」と銘打ったSNSサービスを本格化。ボーナスを餌にその普及に全社員の尻を叩くなど、今後競争は一段と激化するものと予想されている。

 フェイスブックの顧客構造は、顧客の20%に過ぎない北米地域が全売上の60%を占めるというやゝいびつな構造で、今後海外からの収益を増やす方向が迫られている。

 2003年には日本に進出、瞬く間に1千万人超のユーザーを確保。日本に根を張っていたミクシィを追い上げている。

 わが国SNSの牽引役として2004年スタートしたミクシィは、同業のグリーやDeNAがソーシャル・ゲームをメインに急成長する中で、あくまでパソコンをベースとした広告を中心に活動してきた。

 2012年3月期のミクシィの売上げは133億3400万円だが純利益は前年度比45.8%減の7億1900万円だった。

 フェイスブックとミクシィは事業構造が類似しており、フェイスブックのわが国上陸に伴ってミクシィから大量のユーザーが流れたとの見方もある。

 これは別の見方をすると、フェイスブックの今後の姿を示唆しているとも受け止められる。同社をめぐる競争の激しさはすでに見てきた通りだ。楽観は許されない。

 パソコンとモバイル・ベースの違いはあるユーザーの次の一言に尽きる。「スマホではチャットに忙しく、広告をクリックする暇はない」。

(多摩大学名誉教授 那野比古)