第97回「応用範囲の広い基本的なデバイスに注目するベンチャー・ハイテク中小企業」

 今回は連休中でもあり、変わった話題に注目してみたい。

 それは大企業が開発した基本的基幹的なハイテク製品を応用展開、新市場開拓の分野で既存の中小企業やベンチャー企業に大きなビジネス・チャンスが存在するという話である。

 全国さまざまなベンチャー企業などからの話題として、最近よく耳にするものに超微小振動センサーがある。

 これは昨年夏にNECトーキンが開発したもので、水が1滴ガラスの表面に落ちた時の振動もキャッチできるという極めて精密な検知機能を持つのが売り物。

 それまでは科学計測用の精密振動センサーといわれるものでも0.001Gほどまでの加速度しか計ることができなかったが、今回のセンサーでは何と0.0001G以下まで計測できるというのである。センサーにはチタン酸ジルコニウム(PZT)ベースの圧電セラミックスが用いられている。大きさは10円玉の2分の1弱。

 振動センサーの性能は、見地加速度と振動周波数に分けられる。身の回りにある加速度についてみれば、衝撃が10G前後、ジェット・コースター1Gから10G、モーター0.1Gから0.01G、シャーシなど箱ものの振動0.01Gから0.001G、0.001Gから0.0001Gの範囲は高調波振動といわれる。新しい振動センサーは初めてこの高調波振動が測れるのが最大の特徴だ。

 ついでに振動周波数領域についてみれば、従来の化学計測用振動センサーでも10ベルツから10キロヘルツまでであったのに対し、新しい振動センサーでは10キロヘルツ以上が可能である。

 この小さな振動センサーがベンチャー企業やハイテク中小企業の目を引いているのは、シャーシの振動や特に高調波振動が測れる部分。

 機械にあらかじめ組み込んで大きな故障の原因となる微少なガタツキなどを検出、事前にメンテナンスすることが可能となった。

 またバルブの継手などからポタリポタリと滴下する液漏れや配管の微細な以上振動などをキャッチ、事前に手を打つことができる。

 しかも価格が手ごろなのだ。科学用振動センサーは高価だったのに対し、この新しい振動センサーはサンプル(昨年夏の時点で)出荷価格8千円だが、量産によって価格は劇的に下がるものと予想される。これなら高い安全性が要求される機器などに組み込みで着装することで付加価値を上げることが可能となる。

 それどころか、この新型センサーを応用した新しい測定機器、診断装置とった分野も開拓できる。ここにベンチャー企業などが進出できる余地が出てくる。

 聴診器ではないけど、振動はすべての装置・機器システムの内部性能を表す基本であり、計測可能範囲が0.0001Gにまで拡大された意義は大きい。

(多摩大学名誉教授 那野比古)