第94回「ここにきて注目浴びる地域ベースの中小企業再生ファンド」

 地域中小企業の再生ファンドが注目を浴びている。非常にユニークな製品やサービスで旗揚げしたベンチャー企業が本業でのキャッシュ・フローを認められて再生を果たしたケースが少なくない。これは前回紹介したベンチャー投資クラブの高度化、変形ともみることができる。

 地域中小企業再生ファンドは、地域内で完結しているのが特徴である。地域内からの出資金を集めたファンドが、地銀、信用金庫など地域金融機関から、地域内に立地する企業の不良債権を買い取り、これを再生させた上で金融機関に債権を売却、利益を得てこれを出資者に分配するというものである。資金調達法としては、匿別組合、有限責任組合、リミテッド・パートナーシップと様々だ。

 大企業を対象とした、再生ファンドの行動は、企業の株式を取得するいわゆるエクイティ型で、再生後にIPO(株式公開)やM&Aによって利益を得る。しかし中小企業にはこのような派手なエクイティ型は使えない。出資者に対する想定利回りもエクイティ型よりやや低く、10~15%を狙うのが通例だ。

 本業では立派な利益を稼ぎ出しているのに、誤って手を出した別の事業が足かせとなり、債務超過に陥った企業は少なくない。

 本業の金型作りで成長してきた企業が、ゴルフ場の経営に進出したケースがあった。地方の金融機関から10億円を借り入れた。ところが、全国的なゴルフ人口の減少で経営が悪化、それに地価の下落が追い打ちをかけた。

 このケースを持ち込まれたファンドの管理者は、2~3ヶ月をかけてこの企業の資産評価と再生計画の検討を行い、再生を手がける方針を決めた。

 ファンド管理者が評価したこの企業の企業価値は1億円。ファンドは1億円で金融機関から10億円の債権を買い取ることになるが、金融機関には9億円の損失が発生する。これを実行してもらえるか否かがこの再生計画のカギを握っている。

 OKとなった場合、ファンドは再生計画に基づいて買い取った債権10億円中8億円の債権を放棄する。これによって債権残は2億円となり、債務超過は解消される。

 ファンドは人件費などコスト削減、不動産の売却を積極的に進める一方、ゴルフ事業も手放して本業に専念できる体制を整える。

 再生が軌道に乗ると、地域金融機関からのリファイナンスも受けられるようになる。

 こうして企業価値を上げたファンド管理者は、この企業を2億円で売却する。これがこのケースの出口だ。1億円の利益からファンド管理者に成功報酬を残し、残りは出資者に分配される。

 2004年頃からこのような地域中小企業再生ファンドの立ち上がりが全国各地で見られたが、再生の絶対数は多いものではなかった。しかし東北大震災がきっかけとなって地域の再生ファンドが改めて大きくクローズアップされている。

 大手金融機関の目の届かない地方の隙間にある優良企業は地域の宝であるとの意識が芽生えようとしている。

(多摩大学名誉教授 那野比古)