第90回「株式未公開ベンチャー企業などの株価はどのように算定するのか」

 ベンチャー企業から出資を頼まれ将来が有望そうだから投資してみようと思った時に、対象企業の株価を一体どの位に評価していいのか。相手が株式の未公開企業であると非常にむつかしい問題となる。

 相手企業が株式を公開、上場しているならば話は簡単。その時点での株価そのものが1株の価格だ。株価に発行株式数を掛けるとその企業の時価総額が算出される。

 ところが未公開企業で1株の価格を知るのは容易ではない。

 もっとも簡単な方法は、資本金を発行株式数で割り、1株の価格をみる方法。しかし企業が事業展開を行っている場合、株の評価にはその企業の将来性が折り込まれるのが通常であり(公開企業の株価は市場が将来性を折り込んでいる)、確かな評価とはいえない。

 しかし、設立後5年以内で、まだ収益が立っていない企業などの株の評価には、この方法を使わざるを得ないケースが多い。

 次は企業の資産評価を行い、それを発行株数で割って算出する方法。これは清算評価価値ともいわれるものだが、今後の発展が期待されるベンチャー企業の正しい評価法とはいえない。

 類似企業と比較して、対象企業の株価を見積るという方法もある。これは意外とわが国のベンチャー・キャピタルなどで多用されてきた。ITならITといった同業分野で先行したベンチャー企業の足跡をたどり、市場、社会環境の動向を加味しながら、後発ベンチャー企業の発展の様子をそれにダブらせて描くというもので、ここで前後発の違いが最も明確になるのは、創業者のやる気と後発組の製品・サービスの先発組になかった独自性。

 二番煎じが意外と当たらないケースも多く、類似企業比較法はわが国では株式公開の際の売り出し株価の決定にも使われるが、必ずしも定評をもつやり方ではない。

 米国などではDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)が一般的に使われることが多い。

 これは企業の価値とは、その企業が将来にわたって生み出すキャッシュ・フローの総額であるという考えに基づくもので、企業が現在もつ資産価値などは無視する。利益最優先の米国らしい考え方で、CFとしてはフリー・キャッシュ・フロー(FCF)を用い、期間として5年から10年先とするケースが多い。

 具体的には単純化して毎年CのFCFがn年続くことが想定される場合、割引率をrとして、これを現在の価値に引き直すと、n年間のCFCの合計nCを(1+r)のn乗で割ったものとなる。

 割引率は資本コストで、出資が何年で回収できるかという要求利回りが用いられることが多い。出資先がベンチャー・キャピタルなどでは予想IRR(内部収益率)を用いる。

 一方、企業に好意的な出資家は、割引率としてリスク・フリー・レート、一般に30年物国債利回りで満足する。

 DCF法は、企業の継続が前提であり、継続企業評価法とも呼ばれるが、ここでは5年先、10年先までのキャッシュフローをどう読むかで現在の企業価値、したがってそれを発行株式で割った1株の価格は大きく変わってくる。

(多摩大学名誉教授 那野比古)