第89回「震災が契機となった個人資金の流れをみる‐投信、義援金、協同組合」

 これからの資金の流れの中核の一つとして「共感」が東日本大震災を契機に大きくクローズアップされていると書いたが、次世代街づくり、そのための製品普及を目指した新しい形式のファンドが勢をのばしている。

 BNYメロン・アセット・マネジメント・ジャパンが昨年末に設定した追加型投資信託の東日本復興応援ファンドは、当初の設定額を大きく超え、2月末には早くも2倍の100億円に達する勢いだといい、注目されている。愛称は「ニッポンの絆」。証券8社がこの投信を販売しているが、3月には銀行も販売の輪に加わるという。被災経験のある仙台の七十七銀行だ。

 このファンドは、がれき処理など復興に取り組む地元の中小企業の応援に向けるほか、破壊された街の再建にスマートシティなど新しい次世代の構想を取り入れたプランの実現や、それを実現するための先端製品の創出に係わる企業の応援などが視野に入れられている。

 特に意思決定が速い技術力を持つ中小企業が対象とされており、復興需要が本格的に立ち上がる目途がつき始めたのを契機に、復興への共感からファンドへの関心が高まっているものとみられている。

 被災した自治体や募金団体へ直接寄せられる義援金や寄付金という流れもある。2月の時点で合計4400億円といい、NPO日本ファンドレイジング協会のアンケート調査によると、国民4人に3人が何らかの寄付をした形になるという。

 義援金は、日本赤十字社や中央共同募金会など募金団体に集められたもので、自治体を通じて配分される。1995年の阪神大震災では約1800億円がこのルートで配分されたが今回の震災ではすでに4500億円近くに達しているという。また、自治体に直接届けられた寄付金もある。

 対象とされる自治体は、青森、岩手、宮城、福島、栃木、茨木、千葉の7県と各県内の29の市町村、それに震災の翌日に震度6強に襲われた長野県栄村など合計37の自治体。

 アンケート調査によると、おカネか物資を寄贈した人は76.4%に上るという。国民の4人に3人が何らか関与したことを示している。

 個人の寄付金では1万円以上5万円未満が最も多く、全体の25.2%を占め、次いで1千円以上2千円未満が23.3%であった。別の調査では1千万円以上を寄付した企業は280社、金額にして729億円に上ったという。

 このような動きへの受け皿として、中小企業などが個々に受注するのではなく、共同組合を設立して対応しようという動きも活発になっている。

 そのひとつが除染だ。除染作業の受注のほか、関連資材・機器の販売を狙う。

 福島県放射性物質除去協同組合は6社で設立され、組合員約50社はほとんどが中小企業という。このほかに、南相馬市復興事業協同組合、福島県除染復興事業協同組合、みなみそうま除去企業組合、FR事業協同組合などの相次ぐ設立が注目されている。

(多摩大学名誉教授 那野比古)