第81回
「災害からニューBiz①‐“移染濃集”-これからが本番!生の長い巨大な除染ビジネス」

 今年は震災、放射能汚染の復旧事業が本格化する年となる。従来のドル安傾向に加え、欧州各国の財政不安によるユーロ安のあおりを受けて未曾有の円高不況にあえぐ日本。その日本を浮上させる救いの神として皮肉にも災害復興がクローズアップされるのか。

 震災については別の回に扱うとして、原発事故による放射能汚染の問題は、いわばこれからが本番。汚染の元凶である放射性核種セシウム137の半減期は30年と長く、今後息の長い対策を講じていかなければならないからだ。セシウム137の放射能は30年経って2分の1、さらに30年でその2分の1、つまり60年過ぎても4分の1にしかならず、地表で破壊された建物は再建すればそれで終了だが、放射性物質による汚染には一時的な解決策は全くない。

 方法はただひとつ。被汚染物質から放射性物質を抽出、濃度が高くなった危険な抽出物は安全策を施した貯蔵施設に厳重に保管して、半減期による放射能の減衰を待つしかない。

 昨年3月12日の福島第1原発での水素爆発によって主に大量の放射性物質が大気中に放出されたとみられており、米エネルギー省の4月末での推定などによると、第1原発から北西方向に1平方メートル当たり300万から3千万ベクレルの高濃度汚染の帯が、幅10km、長さ40kmにわたって続いている。帯の中心となる場所での積算放射線量は3月12日から5月25日までの時点で最大69ミリシーベルトに達するという。この帯の延長線上にある福島市では原発事故以降の空間放射線量は最大1時間当たり24.24マイクロシーベルトを記録した所がある。

 汚染は主に半減期の長い放射性物質であるセシウム137などによるものだが、地上などに降着したセシウムの粒子は、その場所に固定されるのではなく、雨、風などによってさらに移動する点に問題がある。

 福島第1原発から100km以上離れた赤城山や榛名山に存在する湖沼。ここでは今、冬の風物詩である氷結した湖上でのワカサギ釣りの姿は全くみられない。ワカサギが1キログラム当たり500ベクレル以上汚染されていることが確認されたからだ。

 なぜ、遠く離れた山の上の湖がセシウム汚染リスクにさらされているのだろうか。

 問題は湖に注ぐ水系にある。湖の水系がカバーする山中の広い面積に降着した放射性物質は、雨などによって地表面から洗い流され、最終的に湖沼へと流入する。湖沼から流出する出口が無いような例では、放射性物質の蓄積効果は極めて大きなものとなる。

 海洋では入り江など湾もこれに近い蓄積作用をもつが、潮流などによる海水の循環で、山間の湖沼ほどの厳しさはない。ただあとで触れるが、湾内に流入、改定に沈着した放射性物質は、カレイなど底生の魚を汚染する可能性はすでに指摘されている。

 ところで山中の湖に代表される湖沼の放射性物質による汚染は、いま始まったばかりであり、汚染はこれから一層増大していく。

 雨水などによるセシウム137などの洗い流しは、“移染濃集”という新たな問題を引き起こす。除染ビジネスは、このような2次災害に対応していくためには不可欠なビジネスであり、しかも少なくともこの先30年続く息の長い、しかも巨大な市場となる。

 次回はベンチャーなどが挑む除染ビジネスの具体例を眺めてみよう。

(多摩大学名誉教授 那野比古)