第71回
「内部被曝⑨ セシウム137汚染土壌の“減容”がカギ握る‐水道水から除染の可能性も」

 これまで放射性物質による汚染土壌などの削り取り除染について眺めてきたが、はぎ取った膨大な量の高濃度汚染部分土壌をどこにどう処分するのかという新たな問題が生ずる。

 はぎ取り量は中途半端なものではなく、福島県でみると数キロメートル四方、深さ10メートルの仮置き場が必要になる。はぎ取る汚染土壌(これを高濃度汚染土壌と呼ぶ)をそのまま積み上げるのは容量的に賢明な方策とはいえない。除去が必要なのは土壌の中に含まれているセシウム137などであって、土壌そのものが危険なわけではない。

 そこではぎ取った高濃度汚染土壌からセシウム137など放射性物質だけを抽出できれば、抽出処理後の土壌はそのまま一般の土として利用できることになり、容量を大幅に減じることができる。また、放射性物質の管理も土壌のままの場合よりは容易となる。

 ではセシウム137などを吸着、除去できる物質はあるのか。これにはすでに述べたように、鉱物のゼオライトやプルシアン・ブルーという顔料(ペイントに混ぜる色素)が挙げられる。

 ゼオライトは福島第一原発事故現場でも高濃度汚染水の処理に用いられている物質で、1kgのゼオライトは6グラムのセシウムを吸着できるといわれている。ただし、海水や有機物が混じった汚染水では吸着力は数千分の1になる場合がある。

 ゼオライトは日本では天然に豊富に産出される鉱物で、家庭では猫スナとして利用されている。沸石ともいわれ、加熱するとホウ砂球のように沸騰するのが特徴。東北地方のグリーンタフと呼ばれる第3紀中新世の火山灰海底堆積物の中に長石などの変質により脈状に大量に存在している。

 当初は硬水を軟水に変える軟化剤として、欧州などで使われ始めた(今では合成ゼオライトのパームチットが主)。人類が初めて手にしたイオン交換体で、現在はガスの分別吸着にも利用されるなど用途は非常に広い。

 ハザマやアステック東京は、大きさが5マイクロメートルほどに微細化したゼオライトで、溶け込んでいるセシウムの99.8%を吸着除去できる方法を見つけた。セシウムを吸着したゼオライトは5分ほどで沈殿するという。

 このような方法では、迅速な吸着ゼオライトの除去が大変な作業で、通常は6時間もの長い間沈殿を待たなければならない。

 この問題を慈恵医大の研究グループが磁力を使ってスマートに解決している。

 まず大きさが70から80ナノメートルの磁性体の微粉末を作る。これにゼオライトの微粉末かプルシアン・ブルーをまぶし着け、200~400ナノメートルの粒とする。これをセシウム137汚染が疑われる水道水、海水、牛乳、血液に混ぜる。その結果、それぞれに含まれているセシウムの99.9%が粒に吸着される。そして外部から磁石を近づけると、磁性体は引き付けられ集まってくる。その間15秒から1分。

 この方法は、汚染水道水の浄化にも利用できると期待されている。

 下水道汚泥からセシウム137などを取り除く方法を東亜合成などが開発している。水を加えて密閉、40~50気圧下で250℃に加熱すると、98%のセシウムが水に溶け出すという。この水にプルシアン・ブルーを加えセシウムを吸着させ、凝集剤を加えて沈殿させる。

 低濃度のセシウム汚染水については、産業技術総合研究所が酸を使う方法を提案している。酸を加えてセシウムを溶かし出し、これをプルシアン・ブルーに吸着させるという方法をとると、セシウムの濃度を簡単に150分の1にすることができるという。

 このようなデータからお判りのように、セシウムはゼオライトやプルシアン・ブルーでかなりの除染効果を得ることができる。今後の汚染土壌の減容への期待は大きい。

(多摩大学名誉教授 那野比古)