第70回
「内部被曝⑧ 土壌、水田、焼却灰、側溝泥、落ち葉と広がる一方の放射性物質汚染」

 地表の土壌、水田、側溝、落ち葉などに吸着、堆積した放射性物質を除去することは、周辺の空間の放射線量を下げるばかりでなく、土壌などが乾燥、微粉化して空中に浮遊、それを吸い込むことによって発生する内部被曝源を防ぎ、さらには畑、水田などで栽培した野菜や穀類、牧草などへの放射性物質の取り込みを防ぎ、また家畜類への放射性物質の移行を防ぐという重大な意味をもっている。地下水の汚染も無視できない。内部被曝から身を守るには、まず被曝源となる放射性物質を摂取しないことが自衛上最も重要である。

 東電福島第一原発事故以来半年経った2011年9月現在、地表はどの程度汚染されているのであろうか。

 文部科学省などの調査で、第一原発から10Km以内の警戒区域内をみてみると、西方約3Kmの大熊町小入野では年間508ミリシーベルトの高い数値が出されており、同100ミリシーベルト超が多くの地点で観測されている。

 これらの地点では、一般的な除染だけでは、年間20ミリシーベルト以下になるには10年以上かかるとみられている。

 国は年間5ミリシーベルト以上の汚染がある地域については国の責任で除染する方針を打ち出している。表土5cmの深さまではぎ取るというものだが、このはぎ取り量は膨大なものとなる。例えば福島県の場合、縦横それぞれ3キロメートル、深さ10メートル、容積9000万立法メートルという巨大な廃棄場が必要という。

 計画では、とりあえず「仮置き場」に保管し、それを「中間保存施設」に移すとしているが、仮置き場や中間保存施設の場所選定は各自治体に丸投げされており、選定は遅々として進んでいない。

 仮に除染を行わないとすると、年間20ミリシーベルト以下となるまでには、土壌線量が現在同100ミリシーベルトの場所で10年、同50ミリシーベルトの所では4年かかるものとみられている。

 わが国で初めて信頼できる土壌はぎ取りによる除染データが公表されている。農業・食品産業総合研究機構(農研機構)、農業工学研究所は福島県の飯館村などで農地の除染テストを行った。セシウム137の濃度が1kg当たり1万370ベクレル、空間線量が1時間当たり7.14マイクロシーベルトの場所で、表面の土を4センチ削り取っただけで濃度は75%減の同2599ベクレルとなり、線量も同3.39マイクロシーベルトに下がったという。

 表面から2センチほどを固化剤で固化した後、深さ3センチほど削除すると、セシウムの濃度は1kg当たり9090ベクレルから82%減の同1671ベクレルになり、空間線量も1時間当たり7.76マイクロシーベルトが同3.57マイクロシーベルトに下ったという。

 森林などでは、地上に積った落ち葉を除去するだけでも放射線量を2分の1にできるとされている。居住地域から森林内20メートルまでの落ち葉の除去が推奨される。

 仮置き場などで保管されるのは、はぎ取り土や落ち葉ばかりではない。落ち葉や一般ゴミを焼却する際に発生する焼却灰や側溝からの回収土もこれに含まれる。

 この扱いがまた厄介。環境庁は焼却灰について、1Kg当たり8000ベクレルまでは、廃棄処分を認めている。8000ベクレル以上10万ベクレルの焼却灰については、それをコンクリートで固め、容器に入れて保管するよう指示している。しかし、1kg当たり10万ベクレル超の高汚染の焼却灰については、何ら処置方法は定められていない。

 松戸市のクリーンセンターでは1kg当たり4万7400ベクレルが焼却灰から計測された。ところが福島では同14万ベクレルという高汚染焼却灰が確実に排出されている。

 側溝泥については、会津若松で何と1kg当たり23万7000ベクレルという数値が出ている。

 これからの内部被曝を防ぐ上では環境汚染が重要なテーマとなる。

(多摩大学名誉教授 那野比古)