第67回
「内部被曝⑤ 体内放射性物質の除染は可能か?‐露の除染薬「クロロサン」とは何?」

 1986年のチェルノブイリ原発事故では、13万5000人の避難者を含め1000万人以上に放射性物質による汚染被害が出たとされる。

 これら汚染者の長期的な問題としてクローズアップされたのが食物や呼吸によって体内に取り込まれた放射性物質による体内被曝。

 これら体内に存在する放射性物の排出、つまり除染、浄化は可能なのであろうか?あるいは体内被曝によって生ずる染色体異常やミトコンドリア異常を低減させるような防御薬品・薬草などはあるのであろうか。

 今回から体内汚染の除染、耐染力向上について取り上げる。

 チェルノブイリ事故以降、かつてのソ連や中国ではさまざまな食品が除染効果を持つとして巷間で顕宣された。ナナカマドやノイバラ、クロウメモドキの実、ニンジン、サトウダイコン、バナナ、桑の葉、キノコの霊芝などである。また一般的に各種ビタミン類、植物フェノール、オリゴ糖などがもてはやされた。迷信に近いとの批判もある。

 放射性物質を吸着、排出するものとしては、キトサン(カニ、エビの殻から抽出)、アルギン酸(コンブ、褐藻から抽出)、フィチン酸、タンニン、クロレラ、ミネラル酵母などが挙げられている。ミネラル酵母は骨髄の幹細胞を活性化させる効果があるという。

 放射線防御、抗酸化作用を持つものとしては(カッコ内は含有食物)、リコペン(トマト)、ピペリン(黒コショウ)、トリメチルグリシン(グリシンペタインともいう。ビール)、ターメリック(ウコン)、エピガロカテキンガレート(EGCG、緑茶)、βカロテン、アスコルビン酸があげられた。

 リコペンはトマト、スイカ、アンズ、柿などにみられる赤色の物質でカロテノイドの一種。エビやカニの甲羅を赤色にするアスタキサンチンも同様の効果があるという。

 エピガロカテキンガレート(EGCG)は、茶タンニンとも呼ばれるカテキン類で、緑茶の苦渋味を醸し出す。著名な抗酸化物質で、1番茶より2、3番茶の方が多く、煎じ出され、5~10%。茶カテキンにはEGCGが最も多く、最も渋いものがよいとされる。

 ピペリンはコショウの辛味成分で、白コショウより黒コショウに多く含まれる。

 キトサンはイオン交換作用があり、マンガンを除く重金属吸着材として用いられる。甲殻類の殻、外骨格に多量に含まれる。フィチン酸は殻類に多く含まれるリン酸の主需要貯蔵物質。

 また、免疫力増強、DNA保護作用があるものとしては、キノコに多く含まれるβ‐D‐グルカンが挙げられている。グルカンとは、グルコース(ブドウ糖)で構成される多糖の総称で、ブドウ糖がβ‐1.3結合しているものがグルカン。β‐1.4結合であるとセルローズとなる。

 β‐D‐グルカンは漢方でいう霊芝(マンネンタケ)に多く含まれていて強い苦みがある。霊芝は免疫機能活性化があるとして量産されている。

 これらの物質の中には、伝承として効力が伝えられているものが主で、臨床上あるいは科学的にその効果が証明されているものは少ない。

 むろん、放射性物質に対して臨床上その効果が確かめられたというデータはほとんどない。

 ところで、チェルノブイリ事故後地元のウクライナで開発され有名な除染薬に『クロロサン』がある。その1錠中の成分は、β‐カロチン5ミリグラム、クロレラ・ブルガリス粉末1.5グラム、セレン酵母(含まれるセレンの量50マイクログラム)。これを成形剤などで錠剤としたものがクロロサンだが(飲み薬もあるよう)、これを服用すると、染色体異常の発生する率が低下したという。病院での臨床試験の結果というが、成分からみるとコレゾという効き味をもつものは見当たらない不思議な薬だ。

(多摩大学名誉教授 那野比古)