第58回「放射線障害の核心③‐放射性セシウムやストロンチウムの体内での分布先」

 いま東北は“放射線セシウム牛”でゆれている。この問題については回を改めて取り上げるが、今回は、経口摂取した放射線核種がどのように体内に分布するのか。この問題をICRP(国際放射線防護委員会)のデータで眺めてみる。体内被曝を考える上では極めて重要である。

◆ヨウ素131
 ヨウ素131は消化管で吸収されたあと、その25%が糞として、35%が腎臓を経由して尿として、また5%が乳腺を経由して乳として排泄される。20%が甲状腺、15%が筋肉などに送られる。甲状腺での蓄積が顕著なのは周知の通りだ。

◆セシウム137
 セシウム137は、消化管が吸収されたもののうち、40%が筋肉などへ、10~75%が腎臓を通じて尿として、5~10%が乳腺を通じて乳に排泄される。筋肉への蓄積が多いのが特徴である。

◆ストロンチウム90
 ストロンチウム90については、10%が血液を経由して筋肉などに、7%が骨格に運ばれる。1.7%が腎臓を介して尿に、2.8%が乳腺を介して乳として、また一部は腸肝循環を介して再び消化管に排出され、結果的には大部分91%が糞として排泄されるという。

ストロンチウムと関連して興味深いのは普通のカルシウムの挙動。カルシウムは筋肉などに33%、骨格に8%送られ、尿としては0.5%、乳腺を通して乳としての排泄は大きく20%もあり、糞としては72%である。

 ここでふと思い出されるのは、ヨウ素131に対する通常のヨウ素投与による甲状腺のヨウ素飽和作戦。新たなヨウ素131の吸収の阻止を狙う“防染作戦”である。

 同様なことが、骨沈着で危険視されるストロンチウム90にもいえそうだ。カルシウムを十分摂取することで、ある程度ストロンチウムの骨への沈着を少なくすることができる可能性が示唆される(カルシウムの過剰摂取は不整脈の原因となる場合があるなど要注意)。

 腸肝循環については説明しておく必要がある。食べた物は腸で吸収されると肝臓で代謝され、腎臓より尿中に排出される。肝臓で酸化、抱合反応を受け水溶性に変化される。解毒作用もこの一環である。抱合で大きなたんぱく質などと合体し、分子量が300を超えると、腎臓より排出できず、胆汁とともに再び小腸に戻される。腸内細菌で加水分解され、腸で再吸収され再び肝臓に戻ってくる。これが腸肝循環だが、こうなると体内での貯留性は高くなる。

 ここで食物には特異な性質があることも知っておこう。それは濃縮効果である。放射性核種であろうとなかろうと、セシウムやストロンチウムを体内に蓄積する作用をいい、特に藻菌類にその作用が強い。マンネンタケのゲルマニウム、コウタケのセレンの濃縮は有名だ。藻菌類は生息している環境がそれほど強い放射線核種に汚染がなされていなくとも、それらを取り込み体内に濃縮する。それを食物として取り込む生物に大きな体内被曝源を提供する。特にキノコ類や藻類は要注意だ。

 ところがこの性質を逆手にとり、除染に役立てようという作戦もある。現在福島第一発電所では、放射線核種の汚染水からそれらを吸収、除去するためにゼオライトという粘土鉱物が利用されている。これを藻類に変えようというのだ。

 その藻類は日本バイオマス研究所が見つけ、いまは汚泥や家畜の糞尿処理に利用されている「バイノス」。北里研究所などはこのバイノスが20種もの放射線核種を取り込む力を持つことを発見した。乾燥させ直径3ミリに粒状化したバイノスはゼオライトの5~10倍の吸着能力を発揮する。福島第一原発の高濃度汚染水にバイノス5グラムを10分間投入するだけで、汚染水中のヨウ素の40%、ストロンチウムに至っては80%を吸着、除去できたという。

 これは裏返すと、藻類や菌類がもつ放射性核種の蓄積効果の物凄さを物語っており、食物として摂取する際の怖さを示す“逆反面教師”ともなっている。

(多摩大学名誉教授 那野比古)